<マウンテンドクター>ドラマPが絶賛する杉野遥亮と向井康二の迫真の演技「本当に素晴らしかった」

「マウンテンドクター」第8話より(C)カンテレ

宮本歩に入り込む杉野遥亮の芝居


――主たるキャラクターとなるのが、杉野遥亮さん演じる若い山岳医・宮本歩と、大森南朋さん演じるベテラン山岳医・江森岳人です。ドラマの前半は、宮本先生と江森先生との考え方の乖離が中心に描かれていましたが、杉野さん、大森さんはどんな俳優さんですか。

僕はまだドラマのキャリアが浅いこともあって、脚本という二次元でキャラクターに与えたセリフや見解が、お芝居という三次元になると、しっくりこない場面が何度かあって。そんなときは、キャラクターを深く理解している杉野くんや大森さんの提案に助けられることが多々ありました。

大森さんは、懐が深い。江森先生というキャラクターをご自身でしっかり作った上で、こちらの意図を現場ですり合わせてくださいます。第6話くらいまでの江森先生は度を越えたくらい頑なだけれど、「山に復讐する」という意味がわかった第7話以降は、人間味が出てくる。その違いを見てほしいですね。

杉野くんは、本当に宮本歩になってしまっていると思えるくらい、入り込んでいますね。オフの時のぽわんとした杉野くんから、「今、歩だな」と変わるのがわかる。脚本の中にある歩のジレンマや壁を、本当に追体験してくれている気がしています。そういう生身のお芝居を見せてもらうと、「杉野くんが歩になれるセリフを作らなきゃ」と制作チームの気合が入りますね。そんな2人がぶつかり合って、どう認め合っていくかが後半の見どころになっています。

――ぶつかり合いの裏には、それぞれの抱えている想いがあります。山岳医療という主軸だけでなく、登場人物それぞれの家族との関係というプライベートな側面を描いているのも「マウンテンドクター」の特徴ではないでしょうか。

最初に主人公・宮本歩のキャラクターをどうするか考えたとき、天才スーパードクターと、生身のドクターという2つが思い浮かびました。でもここでエンターテインメントと天才ドクターを掛け合わせたら、見たことのある話に山の絵があるだけの作品になってしまう。だから主人公は、僕たちと同じ地平線上に立っている人にしたいと思ったんです。僕もそうだけれど、お医者さんのバックグラウンドってあまり考えたことないですよね。でも医療従事者の方にも家族がいて、恋人がいて、それぞれに悩みがある。それもしっかりと見せないと、同じ地平線上に立つキャラクターにならないなと考えたんです。

【写真】向井康二は離れて暮らす息子がいる真吾役を熱演(C)カンテレ


向井康二の芝居に寄せる期待


――MMTメンバーだけでなく、歩の同級生・小松真吾(向井康二)の家族も登場しますが、Snow Man向井康二さんがバツイチ子持ちの焼き鳥や店主という設定には驚かされました。向井さんのキャスティングの経緯は?

うちの幼稚園と小学生の子どもが、マッサマンが大好きなんですよ(笑)。だから向井くんのことは多くの番組で拝見していました。そして弊社の「リビングの松永さん」(2024年、カンテレ・フジテレビ系)に出演されていたのを見て、きっとこの方は繊細に物事を考えている人なんじゃないかなと思ったんです。

本作で演じていただいた真吾は、MMTの歩と典子(岡崎紗絵)の同級生で、明るく2人の悩みをきいてくれる存在。向井くんから容易に想像できる役ですよね。でも実は、歩を一番理解していて背中をポンと押してくれる存在で、離れて暮らす息子がいるという事情も抱えている。明るいだけじゃないキャラクターを演じることで、僕も意識していなかった向井くんの人間性、すごく繊細で、周りを気にしてくれてる部分がお芝居に出てくるんじゃないかと思って相談させていただきました。

――実際の向井さんの演技は、いかがでしたか。

向井くんは現場で「今の大丈夫だったかな?」と聞いてくるのですが、そんな心配はいらないくらい良い表情をするんですよ。“お芝居はテクニックだけじゃない”と僕は思う時があるのですが、言葉を発するときの表情、笑い顔だったり、怒った顔だったりが魅力的な人が“お芝居ができる人”だという思いがあります。向井くんは、その表情がナチュラルで、すごくいいんです。ビールを出しながら歩に一言をかける時の表情は、監督がいくら説明してもできない人には一生できないかもしれない。でも、向井くんは、説明せずともそのナチュラルな優しい表情ができちゃう。 もしかしたら本人がまだ気付いていないのかもしれないけれど、本当に色々なシーンで素晴らしい表情をされるんです。だからもっとお芝居をしたらいいなと思うし、また別の作品でご一緒したいなと思っています。

――第8話で真吾が歩に怒りをぶつけるシーンは印象的でした。

「こんな向井さんのお芝居、今まで誰も見たことないだろう」というくらいのお芝居でした。本当に素晴らしかった。撮影がスタートしたときから、杉野くんと向井くんが、お互いの感情をぶつけ合うこのシーンを楽しみにしていたんです。でもお互いがお互いに「楽しみだね」と言うわけではなく、双方が僕に「実はちょっと楽しみだ」と言ってくる(笑)。2人はずっと焼き鳥屋での楽しいお芝居をしながら、第8話に向かって関係性を作り上げていました。だから緊張感を持って第8話に臨めたら、すごくいいお芝居をしてくれる予感はありました。監督の撮り方や演出もすごく良かったと思います。ピークポイントで、ドンって破裂するみたいなお芝居をした向井くんと、それを受け止める杉野くん。見てくださる人も圧倒されるシーンになったんじゃないかなと思います。

――そんなシリアスな一面もありつつ、向井さんは現場のムードメーカーだったのでは?

そうですね。向井くんがいるから現場が明るくなるし、みんながノッてお芝居ができるし。スタッフにも声をかけてくれて、素晴らしい人だと思いました。

「マウンテンドクター」第8話より(C)カンテレ