――聞いていると、想いの深さが引き起こす声の揺らぎみたいなものを感じる箇所もいくつかありました。声に出して歌うということに対しても相当深く考えられたんじゃありません?
いろいろ試しはしました。ただ、歌えば歌うほどストーリーをどんどん深めてしまうというか、ミュージカルのようになってしまいがちで、結果的に聞き手が疲れてしまうんですね。でも、一回深めないと私は歌えないので、自分の感じていることや曲に対する想いを一回出し切ってから、少しずつエモーションを小さくして耳元でちゃんと届く、けれどストーリーが見える曲にしていきました。
――それはミュージカル女優である望海さんならではの視点ですね。その一方で、今後はご自分で歌詞を書いてみたいという気持ちもあったりします?
いえ、私はちょっと無理ですね(笑)。 私がミュージカルで歌っている理由って、他人の書いた台詞や歌詞に、自分自身の経験や持っているものをいかに入れ込めるのか? そこから知らない自分の扉をどれだけ開けるか?ということに挑みたいからなんです。だから、自分の言葉で何かを表現すると、それ以上の広がりがないように感じて私自身がときめかない。きっと他人がつくったものから自分が何を感じるのか? どれだけ発見できるか?っていう、いわば“探検”が好きなんでしょうね。なので、今回は自分の想いからオリジナル曲をつくっていただくという過程でも「このお話からこういうふうに広がるんだ!」という感覚を初めて知れたんです。自分の感じていることを聞き手が共感できる言葉に変えてくださるアーティストの皆さんへのリスペクトの気持ちがさらに強くなりましたし、歌うにあたっても完成形を誰も知らない状態からスタートして、いろんなセクションの方々のお力も借りながら、どんどん立体的になっていくのがすごく楽しかったですね。
――となると、今のお仕事は天職ですね。舞台女優として演じることで、シンガーとしての幅もきっと広がっていくでしょうし、いい相乗効果がありそうです。
別々のことをしているというよりも、自分のやりたいことにうまくつながって、お互い協力し合って前に進んでいる感覚はあります。またいろんな曲に出会って、もっと自分の歌の幅を広げていきたいですし、アルバムの曲も人の前で歌うと変わってくるでしょうから、その変化も楽しみたいですね。
(取材・文/清水素子)
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