<負けヒロインが多すぎる!>遠野ひかる(八奈見杏菜役)「たくさん失敗したけど、諦めないで良かったです」ヒロインの"愛され力"を探る

ありのままの感情をさらけ出せるのが羨ましい

「負けヒロインが多すぎる!」より(C)雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会


――青春ストーリーとしても素晴らしい『マケイン』ですが、遠野さんからご覧になった本作の魅力は?

遠野 恋に敗れる側にフォーカスして描く斬新さと、温水くん視点だからこそ生まれる物語の立体感とテンポ、作品の舞台が実際に存在するリアリティが魅力的だと思います。もちろん、息を呑むようなアニメーションの美しさ、登場人たちの生き生きとした豊かな表情、感情を写すような景色と音楽も素晴らしくて、もう挙げるとキリがないですね…!

――その中でキュンとしたシーンもありますか。

遠野 たくさんあります!それぞれのキャラクターにあるのですが、温水くんをからかうような言動も多い杏菜が、天然な温水くんにいざ距離を詰められるとドキマギしちゃうのは、キュンポイントが高いですよね。

――確かに(笑)。その杏菜とご自分に共通点を感じる部分はあるのでしょうか。

遠野 似てないなあと思うところが多いです(笑)。むしろ、ありのままの感情をさらけ出せるところが羨ましいなと思ったり、恋に敗れる姿も含めて、キラキラした青春を送る彼女が眩しく、どこか遠い存在に感じます。なので、自分では全く意識していなかったふとした瞬間の言動を、共演者さんやスタッフさんが杏菜っぽいとおっしゃってくださるとちょっと嬉しいですね。

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――あと杏菜といえばやはり「食欲」ですよね。遠野さんご自身はいかがですか。

遠野 杏菜ほどの胃袋は持ち合わせていませんが、美味しいものを食べることは私も大好きなんです。大好物は母の作るお雑煮で、本作の舞台の豊橋ならではの食べものだと、「おつつみフィナンシェ」というお菓子がお気に入りです。

――聖地巡礼の際はぜひ食べたいですね!今回の企画では温水役の梅田さんにもご登場いただいていますが、遠野さんは温水というキャラクターの魅力はどこにあるとお考えでしょう。

遠野 いい意味でのモブ力と、深い思いやりだと思います。マケインたちにとって居心地のいい距離感で見守ってくれながらも介入しすぎない、ここぞというときには頼れる正義感を見せてくれる、頼もしい存在ですよね。

――そして、温水は言葉のセンスが抜群ですよね。

遠野 クセ強めなキャラクターばかりの中でツッコミとして、作品を見ている側の気持ちをズバッと代弁してくれつつ、ワードチョイスが温水くんらしさ全開なんですよね。

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――ちなみに杏菜以外で、特に惹かれてしまうキャラクターは?

遠野 温水佳樹ちゃんが本当にかわいいです! お兄様への愛が重たすぎて、当たり前のように危ない域に達しているところも好きです。ゴンちゃん(権藤アサミ)との掛け合いも癒されます…。また、生徒会長さん(放虎原ひばり)もタイプです! 様子のおかしい美人というまたしてもクセが渋滞しているキャラクターで、好きなんですよね(笑)。

数え切れないくらい負けました!

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――本作の舞台、愛知県・豊橋に行かれた感想もお聞かせください。

遠野 アニメ放送前の先行上映会で訪れたときが印象的で。見に来てくださった地元の皆さまに問いかけると、笑顔でリアクションしてくださって温かいんですよね。私もつい嬉しくなって、お話ししすぎちゃいました(笑)。このアニメを見終えたとき、豊橋に縁が無かった方が、豊橋という地にどこか懐かしさを感じたり、足を運びたくなる⋯⋯そんな作品になったら嬉しいですね。

――もうすでにそうなっている方も多そうです(笑)。本作にタイトルにちなんで、ご自身の人生で、「負け」の記憶で忘れられないことはありますか。

遠野 あります…! 声優を目指して様々な事務所のオーディションを何年間も受け続けて、数え切れないくらい負けました(笑)! 何度も何度も同じ課題セリフを録音して、イヤホンで聞いていたことや、面接で上手く答えられなかった質問も鮮明に覚えています。不合格の通知を受け取るたびに落ち込みましたが、アニメが好きという気持ちは変わりませんでしたし、お気に入りのアニメに出会うたびに、“絶対にこの世界に行くんだ!”と決意が固まっていった気がします。たくさん失敗した経験が私の中で活きていますし、あのとき諦めないで良かったと思えるくらい、いまが充実しているので本当によかったなと思います。

「負けヒロインが多すぎる!」より(C)雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会


――「基本的には似てない」とのことでしたが、いまのお話をお聞きして、ハングリーな遠野さんが演じる杏菜役だからこそ、私たちは共鳴し、リアルを感じ得るのかなと感じました。あらためて、いま声優のお仕事で楽しさを感じるのはどんなときでしょうか。

遠野 やっぱり放送を見てくださっている皆さんと一緒に、毎話楽しみにしているときがとても幸せですね。普段、自分の出演作だとどうしても冷静にお芝居を見て、自己評価してしまう節があるのですが、『マケイン』が始まると見入ってしまい、いつも気付くとエンディングです(笑)。とにかくアニメが大好きで、深夜に見漁っていた昔の自分、そのときのワクワクした気持ちを味わわせてくれる作品なんです。いま、この作品に携わらせていただけて、私は幸せ者だなと感じています。

――ありがとうございました。最後に、最終話の見どころやファンの方々へのメッセージをお願いします。

遠野 ここまで『マケイン』を応援してくださっている皆さま、本っ当にありがとうございます! 放送が始まると早いもので、あっという間に負けて、あっという間に最終回で、早くも寂しさを感じます。でも、そんな気持ちを吹き飛ばすくらい、最後の最後まで“これぞ『マケイン』!”と思っていただけるような、らしさ全開のお話をお届けしていますので、ぜひお楽しみください!

■取材・構成/河内文博(アンチェイン)