キム・スヒョンが主演を務める韓流ドラマシリーズ「太陽を抱く月」(Huluにて配信中)。2012年に全20話が放送された大人気ドラマシリーズである同作は、朝鮮王朝の架空の時代に繰り広げられる宮中ラブストーリーを描いた作品だ。第16話では8年前に命を落としたホ・ヨヌ(ハン・ガイン)暗殺事件の真実に、イ・フォン(キム・スヒョン)がついにたどり着く。(以下、ネタバレを含みます)
王族の肩書を捨ててウォル(記憶を失っていたホ・ヨヌ)を選ぶ覚悟があると語るヤンミョングン(チョン・イル)は、その覚悟がそちらにはあるのかとイ・フォンに問いただす。「もし私が身を引いたら、代わりに守れるのですか?少しの犠牲も払わないままで、何を守れるのです」と強く問うヤンミョングンに、イ・フォンは言い返すことができずにいた。
「無実の者を罪人にし傷つけること以外に、一体何ができるのですか」となおも厳しい言葉を続けるヤンミョングンに、机を叩いてやめるように怒声を発するイ・フォン。それでもなお「王様はヨヌを…忘れられますか?私は…忘れられます。王様には絶対に無理でしょう」と言ってのけるヤンミョングンに、イ・フォンは無言で睨みを効かせるのみ。
一方、王妃ユン・ボギョン(キム・ミンソ)は部屋を訪れた女…厄受け巫女ウォルの姿に驚いていた。「あなたは…なぜ来た?」と問うユン・ボギョンに、王妃からの呼び出しを受けたと答えるホ・ヨヌ。「まさかお前は…いや、そんなはずはない。ありえない」とうろたえるユン・ボギョンは、ウォルにかつて呪殺されたホ・ヨヌの面影を強く感じていた。そしてその恐れは、ウォルがホ・ヨヌの名前を口にした瞬間に再び首を持ち上げる。
みんなが自分をホ・ヨヌと間違える、それほど似ているのかと口にするウォル。慌てて帰れと告げるユン・ボギョンに、ウォル…ホ・ヨヌが「ひと言 申し上げます」と語り始める。「私は――先日、隠月閣(ウンウォルガク)でホ・ヨヌの霊を見ました。その霊いわく、"王妃様に伝えてくれ。もう恐れることなく、幸せになってください"と」ウォルが告げたホ・ヨヌの言葉に取り乱したユン・ボギョンは、半狂乱の様相で部屋からホ・ヨヌを追い出すのだった。
帰り道、8年前のことを思い出しながら宮廷を歩いていたホ・ヨヌ。そのまま誘われるように、ヤンミョングンと別れたあとのイ・フォンと出会ってしまう。活人署にいるべきホ・ヨヌがなぜここにいるのかと問い質すイ・フォンに、王妃から呼び出しを受けたことを伝えるホ・ヨヌ。
元々は王と通じていたという噂で処罰された彼女は、急ぎ立ち去ろうとする。しかしその手を引き留めたイ・フォンは、活人署での暮らしを案じてその場を離れさせることもできると言葉にした。しかしホ・ヨヌはその振る舞いが権力の乱用であると忠告し、心のなかでは短気を起こせばもう会うことができなくなってしまうとこぼす。互いに思いをひた隠しにし、涙を堪えながら会話を続ける2人。あふれんばかりの想いを胸に詰め込んだまま、満足に言葉も交わせないまま別れるのだった。
ホ・ヨヌが活人署に戻ると、そこにはチャン・ノギョン(チョン・ミソン)の姿が。何をしに来たのかホ・ヨヌが問えば、来てくださらないので私が伺いましたと答えるチャン・ノギョン。チャン・ノギョンは自身がイ・フォンに呼び出されていることを伝え、その前にホ・ヨヌに会うべきと直感したという。
そして、チャン・ノギョンは初めて8年前の真実をホ・ヨヌに語り始める。大王大妃(テワンテビ)・ユン氏(キム・ヨンエ)に従うしかなかったこと、亡き友であるアリの遺言などを伝え、自分のした罪を告白するチャン・ノギョン。どのような罰であろうと受け入れる覚悟があると言う彼女に、1つだけ許せないことがあるとホ・ヨヌは言う。
「なぜ父を…だましたのですか?」悲痛な表情で問うホ・ヨヌに、チャン・ノギョンは彼が正直な人物であったためだと明かす。当時の王・ソンジョを欺く作戦…ホ・ヨヌを仮死状態にして人知れず運び出す策には加担しないと思ったからだと言う。それを聞いたホ・ヨヌは、自分を殺すべきだったと力なくつぶやく。
「私を生かすための薬が、父を殺す毒になったのです。あなたは父を殺しました。私の家族と、王様が苦しまれた8年間をどう償うつもりですか?答えてください、よくも黙ってきましたね」涙を流し、怒りの感情をむき出しにしながら問うホ・ヨヌ。黙って言葉を受け止めたチャン・ノギョンが、静かに口を開く。
「人命に関わる呪術には、お供えが必要です」と語り出したチャン・ノギョン。当時、強い執念を持つ少女が“望みをかなえるため”といって捧げられ、ホ・ヨヌの死を願った。その人物こそイ・フォンの妹にして、現在はホ・ヨヌの兄ホ・ヨムと結ばれたミナ王女だという。
チャン・ノギョンは言う。8年前の罪の真相が明らかになれば、世子ピンへの呪いに加担していたミナ王女をイ・フォンが裁かなければならない、そしてその夫であるホ・ヨムも罪人になってしまう…すべてを知っても手を出すことはできないようにするため、ユン氏たちが考えた策だろう。そしてチャン・ノギョンは、選択をホ・ヨヌに迫る。
「すべてを暴いて王様の元に行かれるか、口をつぐんでこのまま生きるか」それを聞き、チャン・ノギョンが8年間この過ちを隠して来た理由を知ったホ・ヨヌ。あまりにも残酷な二択に、涙をあふれさせながら部屋へと戻る。部屋で1人涙を流すホ・ヨヌの背を追って部屋を覗くチャン・ノギョンは、その重く苦しい運命を背負わされた小さな背中に、声をかけることができなかった。
翌日、王宮にヤンミョングンが訪れる。戸曹判書(ホジョバンソ)の1人に声をかけている所で、偶然イ・フォンと出会ってしまう。活人署の現状をイ・フォンへ語るヤンミョングンに、政治的な発言を禁じられていると指摘するイ・フォン。しかしヤンミョングンはひるまず、王への進言として聞くようにと厳しい言葉を重ねる。
イ・フォンはそれを受け、臣下たちに活人署の状況について激しく糾弾した。しかし財政不足であるため、いずれも改善のために動くのは難しいと返答が返ってくる。しかしイ・フォンは退かない。王室の財政や臣下たちへの報酬から予算をまかなうと命令し、不正を正すと改めて宣言するのだった。
イ・フォンが部屋へと戻ると、鎮座するチャン・ノギョンの姿が。8年前の真実を追うイ・フォンは、チャン・ノギョンを問い詰める。呪術では人を殺すことはできるのかという問いに、チャン・ノギョンはできないと言った。そして“正確には可能だが、その呪術をかけた者も対価として命を失う”と付け加える。
たとえばチャン・ノギョンが命を失っていないということは、仮に彼女が呪術によって呪った相手がいたとしても“死んではいない”証だと説明するチャン・ノギョン。ホ・ヨヌが選んだ道は、真実を語らないことだったのだ。
チャン・ノギョンが退室したあと、イ・フォンは彼女の言葉に疑問を覚えていた。呪った本人が生きているのなら、呪われた者は生きている。そしてホ・ヨヌの遺体は温かかった。1つひとつの点が、結び付きかけている…。
だがもし生きているのなら、なぜホ・ヨヌは自分の前に現れないのか。思案するイ・フォンの頭に浮かぶのは、やはりウォルだ。しかしウォルが嘘をついていたとは思えない。謎を解き明かすことができないまま、時間は過ぎていく。
しかし調査に出ていたホン・ギュテからホ・ヨヌの墓が掘り返されていたこと、そしてホ家に過去仕えていた奴婢(ぬひ)がウォルのそばにいると知ったイ・フォンは、再びチャン・ノギョンを呼び付ける。
改めてチャン・ノギョンと対面するイ・フォンは、ウォルについて問い質す。イ・フォンはついに真実へと辿り着こうとしていた。「答えろ!ウォルという巫女は、8年前に死んだヨヌか!?」涙ながらに迫るイ・フォンに、チャン・ノギョンはついに観念して目を伏せたままうなずきを返す。
ウォル、そしてホ・ヨヌの真実を知ったイ・フォンは、ふらふらと歩きながら崩れ落ちて胸を押さえる。ウォルへ向け続けてきた鋭い言葉の数々…そしてウォルから向けられた思いやりの全てが、イ・フォンの胸を貫いていた。
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