水原希子、モーニングルーティンを明かす「不要な感情をリリースでき、自分を肯定できるようになった」<徒花>

2024/10/30 08:30 配信

映画 インタビュー 動画

水原希子撮影/梁瀬玉実

10月18日(金)公開の映画『徒花-ADABANA-』。2019年に映画『赤い雪 Red Show』で鮮烈な長編監督デビューを飾った甲斐さやかの5年ぶりの長編作品となる。ウイルスの蔓延で人口が削減し、延命措置として人間に提供される“それ”との物語だ。今作で、病院で療養している主人公の新次(井浦新)をケアする臨床心理士のまほろ役を演じている水原希子。そんな水原に、初共演となった井浦とのシーンの裏側や臨床心理士役を演じた彼女の自分の癒やし方を聞いた。

相談を受けている時は「ストレートに言葉を発しない」

水原希子撮影/梁瀬玉実

――今作は甲斐さやか監督が脚本・演出を手掛けたオリジナル作品です。脚本を読まれた時、どんなところが魅力の作品だと思いましたか。

甲斐監督が手掛けた長編作品『赤い雪』もそうですが、人間の1番怖い部分が描かれていると思いました。理性を失って、少し道を踏み外したら、こういうこともあり得るという恐怖があって。

今作も同じで、怖いけれど、美しい世界観で描かれているところに惹かれました。延命治療をするためのクローンが存在するというお話なので、生命の価値など、いろいろなことを問いかけるような作品だと思います。

――水原さんは延命措置を受ける人をケアする臨床心理士のまほろを演じています。患者に対して自分自身の感情をコントロールする描写も描かれますが、難しそうな役ですね。

本当に難しかったです。臨床心理士という職業を知るために実際にセラピーを体験しましたが、人との絶妙な距離感が必要になってくる繊細な職業なんです。心を開いてもらわなくてはいけないのですが、深入りしすぎてはいけないんです。

患者である新次は、まほろが働く病院長の息子で彼も医者だったこともあり、まほろの仕事を全て把握している状態なんです。一般的な患者と違って、ヒエラルキーがある関係性なので、まほろのもどかしい立ち位置を表現するのが難しかったです。もう監督の“OK”いう言葉を信じて演じました。

――臨床心理士は、患者の心に寄り添いつつも、感情移入しすぎてもいけないわけですが、ご自身は誰かから相談を受けた時、どのようなことに気を付けていらっしゃいますか?

昔は感情移入しすぎて、結構失敗しました(笑)。友達から恋愛相談を受けた時、彼氏があまり良くない人だと思ったら、「大切に思われてないなら、絶対に別れた方がいいよ」ってストレートに言ってしまって。もちろん彼女のことを思っての発言だったんですけど、それ以来、距離をとられてしまったという苦い経験があります。愛している人のことを否定されて、自分が攻撃された気持ちになったのかもしれないですよね。

それ以来、ストレートに言葉を発しないように、気を付けています。ただ話を聞いてほしいのか、変わりたくて背中を押してほしいのか、相手の気持ちをくみ取ろうとしながら、相談に乗るようにしています。

井浦新のアドバイスで、プレッシャーから解放

――新次をカウンセリングするシーンでの優しく穏やかな声のトーンのお芝居が印象的でした。新次役の井浦さんとのセッションはいかがでしたか?

カウンセリングしている時は、私も彼も居心地の悪さを感じているというシーンが多かったので、そこは意識して演じました。井浦さんのお芝居に圧倒されたのは、新次が自分のクローンの“それ”と対峙する場面。“それ”になった時の井浦さんが新次とはあまりにも別人すぎて、驚きました。もちろんヘアメイクを変えていてビジュアルの違いはありますが、それだけではない、2役の演じ分けが本当にすごかったです。

――今作では生と死について考えさせられる描写が多く、森林や海など圧倒的な大自然の生命力の風景が瑞々しく作品を彩っています。現実にいながらどこか異次元感もあるロケーションも魅力のひとつですね。

本当にそうだと思います。森の中で錯乱してしまうようなシーンでは、美しい森の幻想的な光景に助けられました。ちなみに裏エピソードとしては、私、森の中でこけました(笑)。全然、大丈夫でしたけど。苔がふわふわでベッドみたいだったので、助かったんです。

――予告編でも流れていますが、ラストシーンのほうで水原さんが窓辺で涙を流すシーンの表情がとても素晴らしかったです。

感情を爆発させるシーンって、演じる前はとても怖いんです。現場では、誰も話しかけられないくらいナーバスな自分がいました。緊張していた私の隣に井浦さんがパッと来て下さって、「まほろが感じていることを希子ちゃんが感じていたら大丈夫だから」って言ってくれて。

「今自分の中にあるものを出せばそれが正解」とアドバイスして下さったことで、プレッシャーから解放されました。あのシーンでは、窓ガラスに頭に打ち付けるしぐさをするんですが、台本にはなかったアドリブなんです。

――そうなんですね。窓ガラスに向き合ったことで、よりまほろの感情が伝わってきました。

窓に映る顔と反射した顔を撮りたかったことから、監督から「窓のほうに行ってほしい」という指示があったんですね。私には窓に映る自分の反射は見えないから、ここに閉じ込められていて、ここから出られないという窮屈感から錯乱してしまって、ああいう表現になりました。そこは見て欲しい所です。

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