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中村獅童、つかみにいった映画『ピンポン』で大きく人生が変化「自分からつかみにいった作品」

2024/11/23 12:00

中村獅童
中村獅童撮影=黒木早紀子

歌舞伎俳優として活躍中の中村獅童。その演技と存在感は、歌舞伎界にとどまらず、映画やドラマなど映像の世界でも多くの製作陣を唸らせているが、11月22日に公開したアシックスジャパン ショートドラマシリーズ「シゴトはもっと楽しめる」WEBショートドラマ「ワンチーム、ワンホーム」では、若手社員と職人たちとの間で苦労し、デスクに辞表を忍ばせる中間管理職の苦悩を好演じている。「いままでやったことがない役」と語っていた獅童が、仕事をするうえで心がけていることや、自らの俳優人生の分岐点となった出来事について語った。

中村獅童流・仕事の楽しみ方「大きな声を出して笑うこと」

撮影=黒木早紀子


――坂井は中間管理職的な役柄でした。意識したことはありましたか?

獅童:これまであまりこういう役は演じたことがなかったので、難しいなと思いました。しかも、なかなか理解しづらい若者たちに、「仕事ってこういうものですよ」というのを諭すわけですが、今のご時世があるので、あまり強くなりすぎないように、優しい感じでダメ出しできたらいいなとは思っていました。

――「いい家を作りたい」という目的のためにチームワークを大切にしようと心がける坂井ですが、獅童さんが集団のなかで意識していることは?

獅童:やっぱりコミュニケーションですよね。新作歌舞伎を作るときなどは特に、「自分はこういう思いでこの作品を歌舞伎化しようと思っているんですよ」というのを、はっきりと言葉に伝えていく必要があると思っています。みんなが心を一つに舞台を作り上げていく上で、背中で伝えるというよりは、しっかりと会話をしていかないと一つにならないですからね。こちらが一枚岩にならないと、お客様の心には届かないので。

――本作でも兒玉遥さんや砂川脩弥さんなど若い俳優さんたちとご一緒しましたが、後輩たちとお仕事をするときは、どんな心持で現場に入るのですか?

獅童:僕らが若いころは、怖い先輩方にすごく叱られながらやっていましたが、いまはそれをやってしまうとダメじゃないですか。それは歌舞伎の世界だけではなく、どこでもそうですよね。いまは歌舞伎界でも、厳しい指導はなくなってきていますし、伝え方はとても気をつけていますね。

――そのなかで楽しく仕事をするために意識されていることはありますか?

獅童:やっぱり大きな声を出して笑うことですかね。もちろん静かな現場ではおとなしくしていますが、緊張している若い子たちが多い現場などでは、盛り上げた方がいいのかなというのはありますね。大きな声で笑ってバカなことやっているだけで、少し緊張が解けるじゃないですか。やっぱり固くなっていると、変な緊張感が出てきてしまいますからね。

若いころは「何度も仕事を辞めよう」と思った

撮影=黒木早紀子


――獅童さん演じる坂井は、机のなかに辞表を忍ばせていました。獅童さんはこのお仕事を辞めてしまおうと思ったことはありましたか?

獅童:何度もありましたよ。まず19歳ぐらいのとき「(歌舞伎界では)主役は無理ですよ」と言われたんです。それからなかなか芽が出ず、誰にも相手にされなかったと感じる時期がありました。もちろん自分に魅力がなかったんでしょうが、やっぱり人間なので「この世界は向いていないのかな」と思って辞めようと思ったことはありました。

――そこで辞めなかったのは?

獅童:そう思う一方で「まだまだだ!」と思う強い自分もいたんです。その繰り返しでしたね。

――周囲からのアドバイスで持ちこたえたという部分もあったのですか?

獅童:若いころはないですね。一人っ子だったということもあったのかもしれませんが、誰かに相談したり、答えを求めたりする習慣がなかったんです。強いていうなら、親の言葉ですかね。「あなたならできる」とか「自分を信じて」という言葉を母親からもらっていました。葛藤しながらも、その言葉が支えになっていた気がします。

――いまは辞めてしまおうと思うことはなくなりましたか?

獅童:辞めてしまおうとは思わないけれど、いつまで続けていけるのかなという思いはあります。ありがたいことに、いまはいろいろとお誘いをいただけていますが、それがなければ家にいて“自称役者”ですからね。表現の場があるからこそプロの役者なわけで。いつ仕事がなくなるかもしれないという危機感はいつも持っています。

映画『ピンポン』は自分からつかみ取った役!「映画に出演させていただいたことで、たくさんの仕事と巡り合うことができた」

――若い俳優さんから人生相談されることもあるのではないですか?

獅童:まあ、相談されたら「辞めた方がいいですよ」と言いますね。ライバルが一人減るわけじゃないですか(笑)。まあそれは冗談として、でも「なかなか芽が出ずにどうしたらいいですか?」という相談を受けるときは「チャンスは自分でつかみにいくものだから」と言いますね。僕もそういう思いだったので。

――ご自身のなかで「つかみ取ったな」と思った瞬間はありましたか?

獅童:(2002年公開の)『ピンポン』という映画ですかね。オーディションだったのですが、受かって映画に出させていただいたことによって、多くの演出家さんや監督さんに知っていただき、たくさんの仕事と巡り合うことができました。本当にあのオーディションは自分からつかみにいった作品でした。

――最後の作品をご覧になる方にメッセージを?

獅童:僕のイメージからすると、とても珍しい役をやっていると思うので、ぜひご覧ください!

(取材・文:磯部正和)

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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