ディズニーアニメ初の女性監督の視点を入れた新しいプリンセスと真実の愛
ディズニー長編アニメーションとして53作目となる本作。長い歴史の中で初の女性監督としてジェニファー・リーが起用された記念すべき1作でもある。「シュガー・ラッシュ」(2012年)の脚本を担当し、本作も当初は脚本家としての参加だったが、途中からその才能を見いだされて、「ターザン」(1999年)などのクリス・バックとの共同監督に抜てきされた。
ウォルト・ディズニー・ジャパンの公式サイトに掲載された、日本公開10周年に際して寄せられたコメントで同監督は「『アナと雪の女王』では、“2人の姉妹を主人公にした真実の愛の物語”という当時では新しい愛のかたちを表現しました」と明かしている。
そう、この物語では“真実の愛”が鍵となっている。雪と氷に包まれた世界で凍り付いた冷たい心を溶かすのはどんな愛なのか。その“愛”のかたちは、大人ならばハッとさせられることになるはずだ。
エルサとアナがどんな真実の愛にたどり着くのかももちろんだが、彼女たちが体現するプリンセス像も新しい。自分の力を恐れながらも、その力と共に1人で生きていこうとするエルサ。エルサの戴冠式で会った王子と意気投合してすぐに結婚の約束をするような大胆で行動的なアナ。アナ雪以前のディズニープリンセスたちのように一歩踏み出していくのは変わりないが、魔法を個性にしたのをはじめ、出会ってすぐ結婚を決めたり、王子様とのキスといった“お約束”なことを上書きし、夢や望みは現代的だ。夢のような王子様との出会いでのときめきとはまた違う、エルサやアナには共感性が生まれた。
愛すべきサブキャラクターたち
物語として新しいプリンセス像ではあるが、きれいな大人の雰囲気のエルサと愛らしいアナは、子どもたちにとっては憧れ。
そんな2人のプリンセスにも負けず劣らず人気なのが、アナがエルサを探す旅の途中で出会う雪だるまのオラフだ。実はエルサが王国から逃げる途中で、魔法の力で作り出したのだが、幼いときのアナとの思い出が込められていて、姉妹をつなぐものとして物語の重要な存在。夏に憧れるというユニークさ、そして無邪気なオラフの登場に子どもたちはくぎ付けに。いや、子どもたちだけでなく、大人もついにっこりしてしまうかわいらしさだ。
アナの旅の仲間には、無骨な山男のクリストフとその相棒であるトナカイのスヴェンもいる。彼らのやりとりは、ふっと癒やしてくれる時間になる。
大人、子ども、どちらも引き付ける世界観。日本語吹き替え版では、エルサを松たか子、アナを神田沙也加さんが担当し、両者共に歌のうまさは言うまでもなく最高だ。その歌声に乗せて広がっていく真実の愛というテーマは、例えば年齢だったり、そのときの状況だったりで感じることも変わるはず。何度見ても、何年たって見ても、何かが心に響く。長く愛される作品の大きな魅力だろう。
「アナと雪の女王」はディズニープラスで配信中。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
https://www.disneyplus.com/ja-jp/movies/frozen/
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Walt Disney Records
発売日: 2024/07/05