長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『ノーカットホテイソン』(MBC南日本放送)をチョイス。
鹿児島弁は音楽である『ノーカットホテイソン』
東京ホテイソンが、鹿児島のあちこちを巡るノーカットバラエティ、『ノーカットホテイソン』。ノーカットのロケ番組というのはずいぶん珍しいが、それだけではなく、Pocochaにてリアルタイムで配信までされているという真っ向勝負っぷり。さらには、2日で20本撮りという驚異の撮影ペースで、とにかく東京ホテイソンを信頼しきった番組となっている。
今回ノーカットで映し出されるのは、『ノーカットホテイソン』の放送局であるMBC南日本放送に東京ホテイソンのふたりが赴き、MBCラジオ『青だよ!たくちゃん!』に出演する様子だ。ラジオに出演する様子をノーカットで映したテレビ番組というのも初めて見たが、これがなかなか面白い。とにかく東京ホテイソンのふたりに安心感があるというか、場をうまく回しつつ、あくまでもゲストとして支配しすぎない、というバランス感覚が非常に安定している。テレビを見ていて、そういったバランスの欠如にハラハラすることって結構多いんだけど、ホテイソンのふたりにはまるでない。編集をしないということについて、コミュニケーションの問題がそのリスクの大部分を占めると思っているのだが、なるほど、このふたりはまさしく、ノーカットに向いているのだ。
さて、番組の舞台は鹿児島ということで、本編では鹿児島弁についての話題も。ふたりがゲスト出演した『青だよ!たくちゃん!』では、例文を英語と鹿児島弁に訳すという人気コーナーがあり、そこでは、コテコテの鹿児島弁を味わうことができる。私は祖父母が鹿児島出身なので、何度も行ったことがあるし、鹿児島弁ともそれなりに触れ合ってきたつもりなのだが、未だにあこがれが止まらない。日本で一番好きな方言。やたらと耳に心地よく、鹿児島弁というのは、ほとんどBoulevard of Broken Dreamsなのである。
それに引き換え、北九州弁というのは……と地元を卑下し始めるのが私のいつもの流れ。福岡といえば博多弁と相場が決まっている現代では、北九州弁というのは存在すら知られていないことが多く、損をしていると思う。博多弁と北九州弁はまったく違う。「ばい」とは言わず、「ちゃ」と言う。東京に出てくるとき、「ちゃ」無しでコミュニケーションが取れるのか不安だった。北九州じゃ「ちゃ」無しにはやっていけない。急いでほしいときに、「はよせっちゃ」と言わずして、何と言えばいいのだろう……。東京に来て10年経った今、人に急いでほしいときは、何も言わないようにしている。人を急かすのはよくないからだ。
■文/城戸
城戸(きど)
X(旧Twitter):@sh_s_sh_ma1996年生まれ。映画を観るのが好きなフリーライター。オモコロなどWEBメディアを中心に活躍。
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