佐倉綾音が小太刀役で新境地を開く
そんな小太刀は乱馬にお姫様抱っこされて一目惚れ。花束にしびれ薬を仕掛け、乱馬を弱らせて押し倒すとキスを迫る。さらには翌日、学校にまで押しかけて交際を迫る小太刀。この一つのことに夢中になると、周りが見えなくなる感じと、目的のためなら手段を選ばない強引さ……。初見の人も“誰か”とかぶると思ったのではないか。
そう、彼女は九能の妹。九能が女装したら、ほぼ一緒になりそうなくらい容姿が似ているのはもちろんのこと、性格もそっくりだ。しかし、本人たちは全く自覚がないのが面白いところ。対抗試合であかねと乱馬を賭けて戦うと宣言し、高笑いしながら去っていく小太刀。そんな妹を見て、「とんでもないヘンタイ女」と呆れる九能だが、あかねと女らんま(CV:林原めぐみ)に堂々と二股をかけようとしている九能も大概ヘンタイである。
さらには「あいつは陰険で執念深く、気立てが悪いが根もひねくれている」と妹に対して辛辣。たしかに小太刀は気高いお嬢様キャラかと思いきや、試合前に相手に奇襲を仕掛けて潰す卑怯なところもある。だが、本人はあくまでも目的に向かってまっすぐで悪いと思っていない。陰険ではあるかもしれないが、ジメッとした陰湿さがなく、どこまでもぶっ飛んでいるから見ていて面白い。
そんな小太刀を1989年版のアニメで演じたのが、島津冴子。同じく高橋留美子の少女マンガ原作のTVアニメ「うる星やつら」で主人公・諸星あたるのガールフレンドである三宅しのぶも演じている。「男なんてー!」というセリフが有名で、ラムにデレデレするあたるにヤキモキするあまり怪力を発揮することもあるが、基本的にはいい子で声もおしとやか。そこから一転、島津は小太刀役で振り切った演技を見せ、視聴者を楽しませた。
そんな島津からバトンを受け継いだのが、佐倉綾音。佐倉といえば、「五等分の花嫁」の中野四葉役や「僕のヒーローアカデミア」麗日お茶子役など、ハリがあってとびきり元気な声が印象的だ。しかし、今回は独特の艶感がある声で小太刀の変態性を表現。ハイテンションでコミカルな演技も見事にこなし、視聴者からも「あやねるの小太刀が良すぎるな」「佐倉綾音さんってこんな声も出せるんか〜」「違和感ないどころか完全に小太刀だった」「見事な変態っぷり」と大絶賛だった。
※日高のり子の高は、正しくは「はしごだか」
■文/苫とり子