閉じる

【テレビの開拓者たち / 福山晋司】「関ジャニ∞クロニクル」演出家が語る“震災以降のテレビバラエティー”

2017/10/01 18:00

2011年の震災以降、テレビを見ている人たちの意識が大きく変わったんです


「“危機に瀕したときこそ笑いを取るチャンス”。ダウンタウンさんから教わったことは多々ありますが、この教訓は常に胸に刻んでいます」という福山晋司氏
「“危機に瀕したときこそ笑いを取るチャンス”。ダウンタウンさんから教わったことは多々ありますが、この教訓は常に胸に刻んでいます」という福山晋司氏


――では、福山さんのターニングポイントとなったお仕事はやはり…?

「僕がターニングポイントを語るなんておこがましいんですけれども(笑)、確かに『ピカル』で総合演出を務めたことは大きかったですね。これは今回、初めてお話しすることなんですが…『ピカル』が始まってしばらくして、東日本大震災が起きましたよね? 個人的な感覚なのかもしれませんけど、あの震災をきっかけに、テレビを取り巻く環境や、テレビを見ている人たちの意識が大きく変わったと僕は思っていて。どう表現したらいいのか難しいんですが、語弊を恐れずに言うと、“笑いづらい”時代に突入したような気がしたんです。それまでは、『面白けりゃいいじゃん』と若者を引っ張っていくような、ある種、“強気”なバラエティー番組がフジテレビの得意技でしたよね。ところが震災を機に、面白さを享受することに対する戸惑いみたいなものの方が強くなってきて、強気なバラエティーに対して人々が距離を置くようになった。たとえば、構造的な見え方として芸人さんに押し付けるような形で、体を張らせたり、大金を自腹で払わせたりするような笑いに対して、『なんかかわいそう』『つらそうなところ見たくない』『番組側は何様?』『MCがえらそう』というようなリアクションや意見が強くなってきました。もちろん、当人がそうせざるを得ない経緯や笑える結末をちゃんと描けば話は別なんですが、なにせ強気でオラオラなバラエティーに対しての嫌悪感は否めないものとなりました。そのときに僕自身もやはり、改めて笑いというものについて考えさせられましたし、そんな逆境の時期を経たことによって、それまでよりももう一歩、踏み込んで考えるようになったんです」

――実際の番組作りにも変化があったんでしょうか?

「思い入れがあるのは、『ビバリとルイ』というBL(ボーイズラブ)をテーマにしたシリーズコント。ノブコブ(平成ノブシコブシ)の吉村(崇)さんが演じるビバリと、ピースの綾部(祐二)さん演じるルイという、相思相愛の男子2人が主人公なんですが、この2人のお話を、これまでのコントにあったような1話完結モノではなく、連ドラのように描きたくて、日本や韓流のドラマでやってきたベタな手法みたいなものを取り入れたコントを作ったんです。で、その中で、ビバリとルイを引き裂くためのひとつのファクターとして、ルイが不治の病になるという設定を用意したんですね。出演者のみんなとも『ベッタベタだね~』『でも、これくらいの方が笑いのフリが強くなるのか~』なんて言いながらも、BLという時点で王道の恋愛モノからズレてるんだから、軸となるストーリーはなるべくベタな方が分かりやすいだろう、という計算もあって。それは言うなれば、“不治の病”も“死”も、当時の僕らにとっては笑いを作る装置だったんですよね。だけど、震災があった年の『FNS27時間テレビ(めちゃ2デジッてるッ!笑顔になれなきゃテレビじゃないじゃ~ん!!)』(2011年7月23~24日、フジ系)で、『ピカル』のメンバーが東北の被災地でスペシャルライブをやったときに、地元の方から手紙をいただいたんです。そこには、『ルイを殺さないでください』と書かれていて。『ビバリとルイ』を見ることが今、自分にとって数少ない生きがいになっているから、そこにまで死という現実を持ち込まないでほしい、と…。あの手紙は堪えましたね。この時代に笑いを作っていくということは、今までとは違う覚悟を持たないといけないんだということを実感しました」

――「今までと違う覚悟」とは?

「それ以来、バラエティー番組でも“物語”を紡いでいるんだという意識で作るようになりました。たとえば、怒っているキャラクター…あるいはリアルに怒ってる人…が出てくるのであれば、怒る理由をちゃんと描かないといけない。そして、その怒っている人が、30分なら30分、1時間なら1時間という番組の中で、最後には絶対に笑顔になっているようなストーリーにしたいなと。『あ~、よかったね』と見ている人の溜飲が下がるようなお話にしなければならないと思うようになりましたね。

これは最近強く感じることなんですけど、テレビバラエティーは、“破壊”が面白かった時代を経て、今は“創造”をしていかなければならない時期に差し掛かってきていると思うんですよ。以前は『あの番組を見ないと明日の学校で取り残される!』みたいに、お茶の間のみなさんを引っ張って行くような笑いを創造していたのが、震災以後、なにかと笑いは萎縮する傾向となり、番組も新たな笑いや企画を創造するというよりは、これまで築いてきた企画や伝統芸を破壊したり、ずらすことでやり過ごすものばかりとなりました。『関ジャニ∞クロニクル』の現場でも、『笑いのために企画やルールを壊しにかかることも必要だけど、そんなときこそ最後に何かを生み出さないとダメだ』ということは、(関ジャニ∞の)メンバーとよく話したりしてます」

下に続きます
「関ジャニ∞クロニクル」
毎週土曜昼1:30‐2:00 フジ

撮影=木村将/取材・文=月山武桜
  
「ひょうきん族」「電波少年」など伝説の番組の“裏話”が満載!

画像一覧
3

  • ふくやま・しんじ=1980年8月26日生まれ、三重県出身
  • 「“危機に瀕したときこそ笑いを取るチャンス”。ダウンタウンさんから教わったことは多々ありますが、この教訓は常に胸に刻んでいます」という福山晋司氏
  • 2017年7月には「ギャラクシー賞」月間賞も受賞した「関ジャニ∞クロニクル」(フジ系)の人気コーナー「TOGAKI HOUSE」

関連番組

No Image

関ジャニ∞クロニクル

出演者:関ジャニ∞ 

関連人物

  • No Image

    関ジャニ∞

  • ダウンタウン

    ダウンタウン

  • 【春ドラマ】2024年4月期の新ドラマまとめ一覧

    随時更新中!【春ドラマ】2024年4月期の新ドラマまとめ一覧

  • 「ザテレビジョン」からのプレゼント!

    「ザテレビジョン」からのプレゼント!

  • ザテレビジョン マンガ部まとめ

    SNSでバズった話題のマンガが読み放題!ザテレビジョン マンガ部まとめ

  • 【春アニメまとめ】2024年4月期の新アニメ一覧

    随時更新中!【春アニメまとめ】2024年4月期の新アニメ一覧

  • 第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞

    投票〆切は4/5!第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞

  • 推したい!フレッシュFACE

    推したい!フレッシュFACE

もっと見る