藤原竜也が主演を務めるドラマ「全領域異常解決室」(毎週水曜夜10:00-10:54、フジテレビ系 /FODでは毎週放送終了後から次週のエピソードを先行独占配信)の第9話が、12月11日に放送される。本作のクライマックスに向けて、脚本を手掛ける黒岩勉氏とプロデュースを務める大野公紀氏にインタビューを実施。制作の背景や興玉雅役の藤原と雨野小夢役の広瀬アリスのキャスティング、“不可解な異常事件”を解決していく1話完結型の物語から神話への急展開を見せた構成の理由などについて聞いた。
藤原竜也は「唯一無二の存在感と説得力がある役者」
――最初に、なぜ藤原さんを神様として配役したのでしょうか?
黒岩:そもそも藤原さんじゃないと成立しない企画なんです。「僕も神です」ってかなりハードルが高いセリフだと思うんです。神様だと言ってもそこまで「えー!?」とはならない助走を僕はつけたつもりですが、やはり演じている方に説得力がないと絶対に成立しない世界観だとも思っていて。だから、藤原さんが決まったときは、「いけるかも」と確信がもてました。ずっとご一緒したいと思っていた役者さんだったので、すごくうれしかったです。藤原さんになったからこそ、 こういう構成で引っ張れるんじゃないかとも思いました。
興玉雅というキャラクターは神様なので、掴みどころがありません。すごく雅やかで余裕があるんだけど、浮世離れしている。だけど、なんか深いところまで考えてそうだと思わせるキャラクターでと難しいお願いをしたのですが、それを藤原さんは完璧にこなされているので、やはりすごいですよね。
大野:藤原さんの起用理由で言うと、唯一無二の存在感と説得力がある役者さんだと思っていて。黒岩さんもおっしゃる通り、セリフに曖昧さを残しているときでも説得力がある。藤原さんの過去の作品を見ても、皆さんの心に残る名シーンを数々生み出してきていますよね。
今回、重要な神様役をやっていただく中で、 藤原さんだったらそんな過去の名シーンをさらに超えるような、もっと面白いものを作ってくださるんじゃないかという期待感とワクワク感がありました。興玉雅というキャラクターが深く形作られていく中で、もう本当に藤原さんしかいないと確信してオファーさせていただきました。
――バディを広瀬さんに抜擢した理由も教えてください。
大野:藤原さんとの化学反応に期待しました。広瀬さんが演じられている小夢は、第1話では別部署から“全領域異常解決室”という謎の組織に異動してくる存在だったので、視聴者目線のキャラクターです。興玉が群を抜いて変わった存在でもあるから、そこは視聴者の方々の目線に近いようなリアクションで演じてくださる方が良いなと思ったときに広瀬さんだなと。
広瀬さんのすごさは、自然体のお芝居はもちろんコミカルなお芝居もできる。そしてそれを完璧に演じ分ける器用も持っていらっしゃるところだと思っていて。 空席である“全決”の室長が実は小夢だったということが判明し、急に立場が変わるので、その切り替えに必要である、広瀬さんの器用さと溶け込む力が1つの起用理由となりました。
黒岩:神様なので、今回は叫ばない藤原さんを僕は見せたいと思っていました。何千年も生きていて、変わらない人格。もう最初から出来上がっているキャラクター。そのカウンターで、広瀬さんだなと。彼女は第1話から最終話まで変わり続けるキャラクターです。覚醒するというか、自分の持っているモノや自分の重要さ、周りの大事さ、世界の構造などに徐々に気付いていく。全く違う人間になっていくんですよね。
最後は神になるのか、人間になるのかというとこも含めて、それを表現できるのが広瀬さんだなと。変わらない人と変わっていく人というバディの形を面白く表現できるのがお2人だと思ったんです。
大野:黒岩さんとお話していく中で、 男女バディ物で、振り回す側と振り回される側みたいな構造はよくあるので、あえて振り回されない大人なキャラクターとして描こうっていう案が出て、小夢が出来上がりました。
黒岩:広瀬さんは、コメディの役者さんとしても素晴らしいのは知っていましたし、視聴者もおそらくそういう元気で明るい広瀬さんを求めているのかなとは思ったのですが、しっかり地に足のついた女性として始まった方が物語の雰囲気には合っているのではないかと考えました。
「僕も神です」というセリフは『もう一生書きそうにないセリフです (笑)』
――興玉演じる藤原さんの「僕も神です」というセリフが衝撃でした。日常生活はもとより実写作品でもあまり聞いたことがないインパクトがあるセリフですが、どのように思いついたのでしょうか?
黒岩:思いつくと言いますか…狙いとかでは全くなくて、流れの中で必要なセリフだったから書いただけで、最初からこれを言わせたいとかはなくて。狙ったセリフだと絶対に面白くないし、浮いちゃうんですよ。ただ、もう一生書きそうにないセリフですよね(笑)。
おっしゃる通り、アニメーションだったら全然あり得る言葉ですが、実写だとあまり聞き馴染みがない。僕のイメージではもう少しクスッと笑える感じになるのかなとも思っていたのですが、蓋を開けてみたら藤原さんの言い方と広瀬さんの受けのリアクションも含めて、ものすごく説得力がある言葉になっていて驚きました。制作側の僕たちが想像した以上のシーンになるのは、ドラマならではの面白さですよね。
――確かに言葉の強さを感じさせないくらいナチュラルでしたよね。
黒岩:そうですよね、これだけ突拍子もなく非現実的な話を実写の地上波、しかもプライムタイムでやるというのは、勇気がいることでした。神様である組織や個人の設定とかをちゃんと綿密に作らないと、どうしてもチープになってしまう。僕が視聴者だったら、子どもだましだと思った瞬間、一切観なくなりますから、嘘くさくなるのだけは避けようと思っていました。
裏設定も含めて、登場人物や組織、背景を徹底的に考えました。事件も生身の人間らしさもリアルに作るけど、神様でこういう特殊能力があるという部分だけはどうしても非現実的になってしまう。だから、その非現実的設定を特に細かく詰めて、神話監修もシビアにやりました。この努力が担保になって、そこに役者さんの凄みも加わったことで、説得力が増す。だから、この時間帯でのエンターテイメントとして成立するというギリギリのところを攻めました。
TCエンタテインメント
発売日: 2024/02/07