桜井ユキが初主演を務め、高橋一生との共演で話題の映画「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリービング ビューティ」が、10月21日(土)から東京・新宿武蔵野館ほかで全国順次公開される。
主人公・オリアアキ(桜井)は、29歳の売れない女優。毎日、小さなサーカス団でマジシャンの助手をし、30歳を目前にしても仕事への熱も生きる目標もなかった。ルーチンワークのように繰り返されるのは、催眠術にかかるという演技。やがてアキの精神は徐々に摩耗し、いつしか現実と妄想の境界が破たんを迎えようとしていた。唯一、アキの中で美しい思い出として残るのは恋人・カイト(高橋)との時間だった…。
過去と現在、現実と妄想。見る者を縦横無尽の世界に引き込み、その視線を外させない力強い映像で綴るのは、人間の根源に迫る骨太のヒューマンドラマ。自主映画界で注目を浴びてきた二宮健監督が脚本も担当し、かつて誰も見たことがないほど挑発的で衝撃的な世界を描く。
公開を目前に控え、桜井を直撃。ロングインタビューの中で、初主演への思い、作品の見どころ、高橋との撮影秘話、自身の女優像などを語ってもらった。
――初主演の撮影を終えた気持ちから聞かせてください。
完成した映像を何度か見ても、いまだに客観視できない状態で、まだ世界観に浸かっている自分がいるなっていう感じです。
――桜井さんはほぼ出ずっぱりですね。
ここまで出ずっぱりな作品もなかなかないと思います。撮影中は「大変だな」「きついな」って感じる暇もないくらい、日々終えることに必死でした。体力的なものもありましたけど、シーンによっては大変だったなって思うことも、その時はそんなことを感じることなく撮影の日々が過ぎていきました。
――主演ということは意識されましたか?
今こうやって取材を受けたり、掲載されたものを見ることで、「あ、主演なんだな」って自分の中で自覚するくらいで、撮影前や撮影中は、「私主演なんだ」っていう意識はなかったですね。
――では、実際に務めてみて“主演”に対する印象の変化などは?
自分が主演をする日が来ると思っていなかったんですよね。主演って作品のカラーになるし、どの役者さんがやるかによって、その作品自体の色が変わってくると思うんです。
心の動きの全てが作品に影響するという部分では、本当に責任重大なポジションだと思います。役とちゃんと向き合っていないといけないし、少しでもそこが抜けたりするだけで作品に影響を及ぼすという、自覚というものは必要だと思うんです。
だけど、「主演だから」ということを特に意識するということはあまり必要ないんじゃないかなって思っていて、そこに重きを置いてしまうと、自分の中の軸がちょっとぶれちゃうんじゃないかなって思っています。
――今回の作品はストーリーがすごく独特ですね。
台本を読んだ時、気付いたら読み終わっていたというくらい、作品の世界観に引き込まれました。そして、読み終えた時には「やりたい!」と思っていました。
この作品のオファーをいただいた時、肌の露出を含めて大変なシーンや精神的にきついシーンが多いということを、事前に説明をしていただいた上で台本をいただいたのですが、読んだ後もやることに迷うことはなかったですね。
――女優・アキを演じる中で、ご自身と重なる部分もあったのでは?
アキは10代で女優になるということを夢見て、カイトという存在に縛られつつそのまま成長していってしまいました。あったはずの出口ですら自分でどこにあるのかわからなくなっている。そこは私も若い頃にあって、葛藤するアキの気持ちを理解するというか、自分の過去にあった感情などを掘り起こすということはありました。
――これまで演じてきた役とはずいぶんと違いますね。
違いましたね。演じる感情の幅が大きな役だったので、きつかった部分もあります。陰の部分から陽の部分まで、一つの作品の中で感情の幅がとてもある役でした。今までの経験にない奥行きを感じました。
――二宮監督から演出などで言われたことはありますか?
基本的に「こう動いてほしい」「こういう風にしてほしい」という演出をする監督ではないんですね。監督の中にしっかりと作品の世界観と、オリアアキという人物、高橋さん演じるカイトという人物が、監督の中で生きている感覚なんです。
だから、例えばアキとカイト二人のシーンだったら、「こういう生活をしているんだよね。だから、こうだと思うんだよね」って、立体的な話を投げ掛けてくれるんです。「こうしてほしい」というよりも、「こういうことだよ」ってストーリーをその都度渡してくれました。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)