
映画「ラストマイル」(2024年)や金曜ドラマ「9ボーダー」(2024年、TBS系)など、多くの話題作で衣装デザインを手掛けてきた金順華氏が、現在放送中のドラマストリーム「地獄の果てまで連れていく」(毎週火曜夜11:56-0:26、TBS系※一部地域を除く)でキャスト全員の衣装を担当。
同作は、復讐に人生をささげた主人公が、悪魔のように非情なモンスターを破滅へと追い込んでいく、2人の女性の愛憎渦巻くスリリングな復讐劇。家族を殺した女に復讐するため整形して近づく主人公・橘紗智子(たちばな・さちこ)を佐々木希、天使のような笑顔の裏に殺人鬼の顔を潜ませる非情なモンスター・花井麗奈(はない・れな)を渋谷凪咲が演じている。
金氏のデザイン哲学と手法には、衣装が持つ「語る力」を最大限に引き出す秘密が詰まっている。そのこだわりと緻密な計算をインタビューを通じてひもといていく。
「“美しい人を美しく見せない”、これが今回の最大の課題」
――本作ではどのような役割を担われましたか?
普段は俳優専属として撮影現場に入ることが多いのですが、今回はエキストラを含む、キャスト全員の衣装を担当しました。シーン全体のバランスを意識し、香盤表を基に細かく調整しました。「このキャラクターにはこの衣装を」と決めたら、他の登場人物はどう合わせるか。全体の調和を取りつつ、登場人物の個性が際立つよう工夫しました。全体を見る広い視点が求められる仕事で、とてもやりがいがありましたね。
――衣装を担当する際、特に意識したことは何ですか?
作品のテーマやトーンに合わせて衣装をデザインすることです。本作は復讐劇なので、衣装が物語の緊張感や登場人物の感情を支える重要な要素になります。一方でヒューマンドラマでは、登場人物が自然に溶け込むことが求められるので、衣装はあくまで“引き立て役”です。
作品ごとに衣装の魅せ方を柔軟に変え、物語の一部として機能させることを心掛けています。例えば、上着一つにしても素材や生地の厚さ、色味などを、それぞれのキャラクターの背景や立場の違いが視覚的にも明確に伝わるように工夫しています。
――衣装デザインで加えた“アクセント”は何かありますか?
“美しい人を美しく見せない”、これが今回の最大の課題でした。主人公・紗智子は不幸を背負った女性。佐々木希さんの華やかさを抑えるため、くすんだ色合いや薄い素材を選び、彼女の陰影や悲しみを表現しました。
また、監督からは「発色を意識した撮影」に合わせ、衣装も独特なカラーリングを求められました。そのため、衣装が画面の中でどのように映るのか、色と質感、バランスを徹底的に計算しました。衣装はただの装飾ではなく、登場人物の背景や立場を映し出し、物語に深みを与える重要な要素です。紗智子の衣装も、華やかさを抑えながら、彼女の苦悩や強さを静かに語っています。
“さえないヒロインがきれいに変身する”のが定番ですが、本作ではその逆。主人公をあえてトーンダウンさせる珍しいアプローチを採用しました。佐々木さんの美しいオーラを封じ込めつつ、クローズアップでは彼女の美しさが“自家発光”し、むしろ“美しいものに恐怖を感じる”という新たな効果を生んでいます。佐々木さんがどのように変貌していったのか、じっくりと堪能してほしいですね。































