【テレビの開拓者たち / 鈴木おさむ】地上波もネットも、面白いものを表現する場という意味では同じなんです
SMAPというスターと一緒に番組を作れたことは、とてつもない贅沢でした
――近年は、地上波のテレビと動画配信サービスが協同で番組作りを手掛けるといったケースも増えてきているようですが、一方では、地上波とそれ以外のメディアは全く別物だと考えている方もいるようです。
「僕なんか、もっと仲良くなっちゃえばいいじゃん、と思うんですけどね(笑)。いや、もちろん地上波のパワーはまだまだすごいですよ。例えば、僕が名前を隠して参加していた『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)という番組も、音楽界に影響を与えたと思いますし。そういうふうに、地上波のテレビから新たなムーブメントがどんどん生まれたらいいなと思うけど、他のメディアから次々と新しい文化が生まれてきているのも事実ですから。現に今、Amazonプライム・ビデオの『バチェラー・ジャパン』とかも流行ってるわけだし、僕は関わっていないけれど、この前AbemaTVでやった『亀田興毅(に勝ったら1000万円)』の特番もすごかったじゃないですか。それに、この『冗談手帖』だって、BSの番組ではあるけど、かなり反響が大きいし、地上波ではできない新しいことをやれているという自負もある。要するに、地上波も、BSもCSも、ネットの動画も、僕の中では差別化していないというか。面白いものを表現する場という意味では全部同じ、という感覚もあるんですよね」
――またおさむさんは、芸人さんの番組を手掛ける一方で、SMAPのバラエティー番組も数多く手掛けてきました。
「20年にわたって『SMAP×SMAP』という番組を作れたということは、テレビ人として、ものすごく貴重な経験だったと思っています。番組が始まるときに、プロデューサーの荒井さんがおっしゃっていた言葉は今でも忘れられないですね。『スマスマ』がスタートした1996年というのは、クラブやスノボが流行り始めたころだったんですけど、荒井さんいわく、『“0”から“1”を作るんじゃなく、ディスコがクラブになり、スキーがスノボになったように、今までテレビバラエティーが作り上げてきたものを、SMAPという新しい才能によって、より輝きを放つものにアップデートしてほしい』と。その考え方には本当に感じ入るものがあったし、実際、とても勉強になりましたね。週に一度の会議も刺激的で、毎回、他の番組とは違う発想で臨んでいました。本当に、SMAPというスターと一緒に番組を作れたことは、テレビの作り手として、とてつもない贅沢だったと思います」