
3月19日からディズニープラスのスターで配信が始まったヴィレッジ・サイコスリラー「ガンニバル」シーズン2。人里離れた閉鎖的な村を舞台にしたシーズン1から続く狂気に満ちた物語で、主人公の警察官・阿川大悟を演じているのが柳楽優弥だ。3月26日に35歳になった柳楽だが、20年以上になるキャリアの中で、艶っぽさを備えた格好いいヒーロー像を開拓してきた。
見る者を因習村の世界に誘うジャパニーズホラー
同名コミックを原作に、架空の山村・供花村(くげむら)を舞台に展開される「ガンニバル」。村で奇怪な事件が起こり、怪しげな村人の視線、謎めいた祭り…と、いわゆる「因習村」の要素がちりばめられ、ジャパニーズホラーの王道をゆく一作だ。柳楽が演じる主人公の大悟は、東京からこの村に赴任してきた駐在所の巡査。というわけで、シーズン1冒頭の大悟は、いかにも快活な若き警察官という姿で現れる。序盤にしてすでに怪しげな村人の言動との対比で、見る者を因習村の世界に誘ってくれる。
その大悟も、村を事実上支配する「後藤家」の内実を調べていくうちに、目が据わってくる。実は子どもを誘拐して祭りの生贄にしているのでは…。こんなおぞましい村の疑惑に近づいていく一方で、大悟には娘のましろ(志水心音)を誘拐した小児性愛犯を射殺した過去があった。おかげで愛娘から「暴力警官」と言われるほどの激情家で、警察のチームワークを無視して暴走することもしばしば。
激しいアクションに挑み、血にまみれ、銃をぶっ放す柳楽のバイオレンスな演技は、本作のスリラー要素をいっそう引き立てる。もともと狂気を秘めていた部分はあるものの、シーズン1の第1話からの変貌ぶりを見て行くと、彼までもが供花村の狂気にとらわれているようだ。
是枝裕和監督が抜てき「誰も知らない」から21年
本作で見せる柳楽の目力の強さは、スクリーンデビュー作「誰も知らない」(2004年)から変わっていない。このデビュー作も、実際に起きた児童置き去り事件をモチーフにしたシリアスな展開。その中で彼が演じた福島明は、母親に置き去りにされて弟妹の面倒を見ている12歳の少年。「目力がある」とオーディションで柳楽を抜てきした是枝裕和監督の期待通りに、12歳の心境を繊細に見る者に伝えた。
柳楽は、いわゆる美少年タイプというよりはデビュー以来の目力と濃い色気が倒錯的な魅力を放つタイプ。ゆえに映画「銀魂」(2017年ほか)シリーズでの“鬼の副長”土方十四郎のように漫画を実写化したけれん味の強い役も似合うし、クセのあるダークヒーローはまさに真骨頂。中学受験を舞台にしたドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」(2021年、日本テレビ系)での二面性のあるスーパー塾講師・黒木蔵人もそうだろう。
「二月の勝者―」は原作コミック同様、黒木は桜花ゼミナールの生徒たちの前ではきっちりと髪をセットしているが、夜の街で恵まれない子どもたちを教えるシーンでは髪をぐしゃぐしゃにしてラフなスタイル。黒木のポーカーフェイスながら情に厚く、桜花の同僚や生徒にはプライベートを明かそうとしないミステリアスさまで柳楽は見事に体現した。

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