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美空ひばりの“歌だけ”で終わらない魅力「ひばりの春は唄から」に見る、たぐいまれな表現力の深さと幅

2025/05/08 18:00

「ひばりの春は唄から」より
「ひばりの春は唄から」より(C)1954年松竹株式会社

2025年5月29日(木)は、“昭和の歌姫”として語り継がれる美空ひばりの生誕88年。美空といえば没後には女性初の国民栄誉賞を授与されるなど、長きにわたって日本の歌謡界をけん引し続けた伝説の歌手だ。その活動は歌手としてだけでなく銀幕にも及び、美声を武器にしたミュージカル的な演技も高く評価されている。そんな彼女の名曲を特集した“ヒットパレード短編集”が「ひばりの春は唄から」。令和にも受け継がれるべき同作の見どころを振り返る。

さまざまな映像と歌を楽しめる「ひばりの春は唄から」


美空ひばりといえば、2019年の「第70回NHK紅白歌合戦」でAI技術によって“復活”を遂げたことでも話題となった。秋元康が作詞・プロデュースを手がけた新曲「あれから」が披露され、SNSでは「#美空ひばり」がトレンド入り。AIや秋元康といったキーワードが若年層にも刺さり、幅広い世代の関心を集めた。

そんな彼女自身の紅白初出場は1954年の「第5回NHK紅白歌合戦」。1957年から1972年までの16年連続で出場を果たし、司会と大トリを兼任するなど名実ともにスターの道を歩んだ。

「ひばりの春は唄から」は、名実ともに国民的歌姫として人気を博していた美空ひばりのヒット曲・代表曲を貴重な映像と共に紹介する作品。数々の映像作品において披露した美空の美声と演技を堪能できる。美空が映画のなかで歌うシーンはもちろん、演技に彼女の歌声が乗るひと幕が次々に映し出されていく。

同作の魅力はなんといっても、さまざまな役を演じた美空の百面相。たとえば同名映画の主題歌となった「あの丘越えて」の歌唱映像ではクラシカルなワンピース姿で虫取り網を手に夏空の下を歩く、美空の無邪気な姿が映し出されている。かと思えば「お山の杉の子」では火照った頬にホクロメイクの和装姿で、ユーモラスな田舎娘に変身。そして「ひばりが唄えば」ではキャスケットに破けたシャツというラフな衣装で、ボーイッシュな姿を魅力的にのぞかせる。

劇中劇も含まれるため、楽曲ごとに異なるキャラクターはまさに七変化。見事に演じ分ける美空の豊かな表現力には、改めて驚かされるというものだ。

「悲しき口笛」
「悲しき口笛」(C)1949 松竹株式会社

歌だけじゃない美空ひばりの真骨頂


美空の演技力・表現力は“歌手が演技にも手を出して…”というほど軽いものではない。彼女は歌手としてだけでなく、女優としても長い芸歴と人気を誇っているのだ。

生涯では150本以上の映画に出演し、「“ひばり”の名があれば客が入る」と言われるほどの存在感を放った。高倉健や里見浩太朗といった人気俳優との共演も後押しし、1961年にはブルーリボン賞の大衆賞を受賞している。

彼女の映画初主演作は、12歳のときに出演した「悲しき口笛」(1949年)。シルクハットに燕尾服で歌い踊るまだあどけない美空の姿は、往年のファンなら記憶している人も多いだろう。戦後日本を懸命に生きる少女・ミツコを熱演し、日本中から共感の声が多く寄せられた。

さらに映画「東京キッド」(1950年)では、“エノケン”こと榎本健一や花菱アチャコら喜劇俳優と共演。幼くして母を亡くし貧しい男性に育てられながらも、最後は資産家の実父に引き取られるという難役に挑んだ。少女時代の美空は可憐な風貌と相まって、どこか儚げな役柄を数多く演じている印象だ。

強い意志を秘めながら1人の男性を愛する女性(「伊豆の踊子」[1954年])や、夫と元恋人の間で揺れるクラブのママ(「べらんめえ芸者と丁稚社長」[1959年])など、年齢を重ねるごとに演じる役柄にも演技にも深みと幅が増していく。芯の強さと凛とした美しさは見る者を魅了し、52歳でその生涯を閉じるまでその輝きが色あせることはなかった。

「ひばりの春は唄から」においても、その片鱗は覗いている。わずかな歌唱シーンではあるものの、美空の演技力と歌唱力の見事なコラボレーションを見せたのが映画「姉妹」(1953年)のワンシーンである「春のサンバ」歌唱シーン。

美空は仮面を身につけて、陽気で明るいサンバを歌い踊る。だが彼女は三姉妹の末っ子で、長姉と次姉の婚約騒動に奔走する役。両姉のことを大切に思いながらも、すれ違う気持ちと状況。表面を保とうとしても隠し切れない悲しみが涙となってこぼれ、やがて歌声も湿り気を帯びていく。

だがそうした“悲しみ”を歌で表すにあたって、美空は途切れ途切れになったり、涙混じりに潰れるような演技はしない。歌手として歌は完璧な完成度を見せながら、声の張り方やテンポで感情の移り変わりを表したのだ。これが若干16歳のときの演技というから恐ろしい。

美空のヒットパレードを映像とともに振り返る「ひばりの春は唄から」は、CS放送「衛星劇場」が5月10日(土)昼11時から放送予定。なお同局では「不死鳥 美空ひばり~永遠の歌姫~ 生誕88年」と題した美空ひばり特集をおこなっており、「ひばりの春は唄から」以外にもさまざまなタイトルを取り上げるという。

映画初主演作「悲しき口笛」(5月10日[土]朝4:30)をはじめ、森進一との共演作「美空ひばり・森進一の花と涙と炎」(5月15日[木]朝8:30)「花の不死鳥」(5月13日[火]夜6:15)、美空が一人3役を務めた「ひばり・橋の花と喧嘩」(5月17日[土]朝11:15)など、黄金期の美空ひばりの姿をたっぷりと楽しめる。

数多くの名曲を持つ美空ひばり。彼女のたぐいまれな表現力を映像の面からも楽しめる貴重な映画作品を、節目の機会に振り返るのもいいだろう。

「ひばり・橋の花と喧嘩」
「ひばり・橋の花と喧嘩」(C)1969 松竹株式会社

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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  • 「ひばりの春は唄から」より
  • 【写真】「美空ひばり・森進一の花と涙と炎」で見せる凛とした姿も、美空ひばりのある一面に過ぎない
  • 「ひばりの春は唄から」より
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