【テレビの開拓者たち / 横井雄一郎】「クレイジージャーニー」演出家が画策中の新企画とは…?
笑えて知的好奇心を満たす番組を作るのが理想です
――松本さんとお仕事されてみて、いかがでしたか?
「松本さんという人は、笑いの天才でありながら、今でも笑いを作ることに対してものすごくストイック。『リンカーン』のときも、新企画を作る事前の打ち合わせをとても入念にされていて、バラエティー番組とは本来こうやって作っていくものなんだなと、すごく勉強になりました。驚いたのは、普段は非常に常識的な方だということ。発想力がぶっ飛んでいる芸人さんは他にもいらっしゃると思うんですけど、松本さんは、誰も思い付かないようなぶっ飛び方をするかと思うと、ちゃんとしてるときは、ものすごくちゃんとしている。これってある意味、人として一番クレイジーだと思うんですよね(笑)。
そういう意味では、設楽(統)さんも小池(栄子)さんも、MCは3人ともクレイジーかもしれません(笑)。設楽さんなんて、朝の情報番組の司会をやってるのに、バナナマンのコントライブで見せる顔は、狂気以外の何物でもないですから。普段は常識的なだけに、よけいすごいというか。常識と狂気を両方併せ持っている人はやっぱり最強だなと」
――番組を演出する上で心掛けていることは?
「ジャーニーの皆さんと各国の文化に対して、リスぺクトを持って接することですね。いい部分も悪い部分も。単なる物珍しい人、という紹介の仕方はしたくないし、例えば、スラム街とかでも、そうなる背景があるわけで、ただ『汚い』とか『ダメだ』ということではなく、なぜ汚くなってしまっているのかも含めて伝えるのが、僕らスタッフの仕事だと考えています」
――先ほど「自分の好きなことをうまく番組作りに生かしたい」とおっしゃっていましたが、横井さんが今、いつか番組にしたいと思っている“好きなこと”はありますか?
「日本の歴史が大好きなんですよ。休みがあれば、お城や合戦の跡地を見に行ってますし、家に帰って必ず見る番組は『歴史秘話ヒストリア』(NHK総合)で(笑)。ベタですけど、特に好きなのが織田信長。松本人志さんしかり、既存の常識をぶっ壊すヒーローに、僕ら凡人は憧れるわけですよ(笑)。その破天荒さも、実は緻密な計算に裏付けされていたりするところにもシビれますし。そういうワクワクをうまく企画にして、歴史に興味がない人でも楽しめる番組を作れないかと今、画策しているところです。男臭い番組になりがちですが、切り口を工夫して、歴史上こんなすごい事実があったんだという面白さを、なんとか表現できないかと思ってるんですけど」
――ネット配信などが増える中、テレビというメディアのこれからの可能性について、横井さんはどのように考えられていますか?
「それでも本当に面白ければ見ていただけると思うんです。サッカーに例えると、C.ロナウドやジダンはどのチームに移籍してもしっかり活躍してますよね。要するに、ネットがどうこうというのは言い訳にしかならないのではと。今だって『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)みたいに面白い番組はちゃんと20%を取ってるわけですから。僕らはもう、ひたすら純粋に面白いものを作るべく頑張る以外ないんじゃないかなと。
その意味では、ネットで検索するだけで、簡単にいろいろ知れたり、見れたりする時代ですけど、それを単なる情報としてではなく、うまくエンターテインメントと融合させて、笑えて知的好奇心を満たす、そんな番組を作るのが理想ですね」