【テレビの開拓者たち / 橋本裕志】「『オトナ高校』は男女の思惑がぶつかり合う“活劇”なんです」
「ショムニ」(1998年ほかフジ系)や「死神くん」(2014年テレビ朝日系)などの人気漫画の実写版から、山崎豊子原作の「華麗なる一族」(2007年TBS系)、「運命の人」(2012年TBS系)といった重厚な群像劇、そして今年1月期に放送されたオリジナル作品「就活家族~きっと、うまくいく~」(2017年テレビ朝日系)まで、実に幅広いジャンルで活躍中の人気脚本家・橋本裕志氏。かつてはアニメの脚本も手掛けていたという彼の、脚本家としての原点とは? テレビドラマを手掛けるようになったきっかけや、脚本を書く上でのこだわりや信条、さらに10月からスタートした三浦春馬主演の新ドラマ「オトナ高校」(テレビ朝日系)の制作秘話などを聞いた。
ドラマはオリジナルの方がワクワクしてしまうんですよ
――橋本さんが脚本を書き始めたきっかけは?
「当初は舞台劇をやっていて、そこで戯曲を書いていました。その後、諸先輩方の紹介で映画やアニメの脚本を書くようになりました。初めて書いた連続ドラマは『ショムニ』ですね。当時、アニメで付き合いのあったプロデューサーが『ショムニ』のプロデュースを担当することになって、僕に声を掛けてきてくれたんです。そこから、『WATER BOYS』(2003年ほかフジ系)という仕事に繋がっていくんですが、この2作品は、本当に驚くほどたくさんの方々に見ていただいて。僕が書いたものでも世の中の人は喜んでくれるんだと、背中を押してもらったような気がしましたね」
――アニメとドラマでは、脚本の書き方に違いはあるのでしょうか?
「どうなんでしょうね。基本は違わないのですが、あるといえばあるのかな。最近はアニメ的な表現を取り入れるドラマも増えてきているので、ボーダレス化が進んでいるような気もしますが。一番の違いはドラマは生身の俳優さんが演じるということだと思っています。それと制約の違い。アニメだと本当に何でも書けちゃいますからね、どんなに突拍子もないシチュエーションでも(笑)。そういう意味では、アニメならではの表現の広さはあるのかもしれません」
――山崎豊子さんの小説が原作の「華麗なる一族」など、原作をドラマ化する難しさを感じることはありますか?
「原作がある場合は『原作よりも面白い』と思わせたい、という気持ちで取り組むわけですけど、そうすると、どうしても舞台や人物の設定を変えざるを得ないこともあるので、原作を尊重しているつもりでも原作者サイドと揉めることもしばしばあって(笑)。だから僕の場合は、どちらかと言うと、オリジナルの作品を自由に書く方が楽しくて好きですね。そもそもテレビドラマというのは、オリジナルのものを発信しやすいジャンルだと僕は思っていて。脚本家としてもそれが一番ワクワクする仕事だと思っています。ところが今や大手の映画は興行のために原作ありきの傾向が顕著ですし、連続ドラマにしても視聴率や安心のためにそっちに行きがちな傾向が強まっている気がして。だから僕は、プロデューサーさんから『何かやりませんか?』と声をかけてもらったときはとりあえず、まず『オリジナルをやりませんか?』と言うようにはしています」
――“オリジナル”ということに強いこだわりをお持ちなんですね。
「こだわりというより欲求ですかね。脚本家をやっているからなんでしょうが、視聴者としての僕も、ドラマはオリジナルの方がワクワクしてしまうんですよ。僕が脚本家になる前、若いころに惹かれたドラマも、市川森一さんや山田太一さんといった大先輩方のオリジナルでしたから」