【テレビの開拓者たち / 橋本裕志】「『オトナ高校』は男女の思惑がぶつかり合う“活劇”なんです」

2017/11/05 10:00 配信

芸能一般

登場人物たちの個人史やキャラクターをどう作るかをとことん楽しみたい


橋本裕志氏の最新作「オトナ高校」(テレビ朝日系)。エリート銀行員ながら、30歳にして童貞の“チェリート”荒川英人(三浦春馬)が悪戦苦闘する姿を描く©テレビ朝日


――10月から始まった「オトナ高校」は、橋本さんのオリジナル脚本ですね。

「そうですね。プロデューサーの貴島(彩理)さんも、『ぜひオリジナルで行きましょう』という意欲のある人なので。今回は、貴島さんと相談していく中で、だんだんと形になっていった企画です。貴島さん言うところの『妄想』(笑)に刺激された僕が、調子に乗ってバカな提案をしても、意外なほど面白がってくれるんですよ(笑)。それは楽しい反面、暴走しすぎて視聴者に引かれるのではという怖さも生まれるんですが、何か殻を突き破りたいという欲求もあって。今回はなるべく振り切る方向に舵を切ったつもりではいます。

貴島さんのいい意味での勇敢な乱暴さと、強引さを楽しもうとする僕の感覚が、相乗効果となって突き抜けた作品になっていけたらいいのかなと思っています」

――最初の企画書の段階では、どこまで決まっていたんですか?

「性交渉の経験がない人が強制入学させられる学校があって、生徒は経験したら卒業する、というところは決まっていました。そこから、この突飛な設定をどうやって現実になじませていくのか。なじませ過ぎてもつまらないんじゃないのか。そのためにはどういう人物設定がいいのか。校則とか授業内容とか、学校の設定はどうするのか。そういったことを少しずつ決めていきました」

――脚本を書く上で取材はされたのでしょうか?

「まず強い興味を持ったのは、今、少子化の問題が深刻になっている中で、30代以上の未婚女性の30%、男性の25%が未経験であるという、厚労省が発表したデータです。もちろん、『日本の皆さん、もっと子供を作りましょう』と世間を啓蒙するドラマにするつもりは毛頭ありませんが(笑)。

恋愛迷路をさまよう今の男女の情報を、登場人物のキャラ作りのヒントにした部分もあります。このドラマの登場人物たちは恋愛がうまくいっていない分、どこか閉じていて、自分の中で言い訳を作ってしまって、勝手に自己完結しちゃってるところがあるんですね。それで周囲から理解され難い価値観を自分で醸成している。そんな人たちが出会って、それぞれのズレた意見をぶつけ合っていくさまを楽しんでいただけたらいいなと思います。

30オーバーの未経験者を描くことに関しては、どんな人にも絶対に未経験の時代はあるわけなので、若いときの自分や友人に気持ちを寄り添わせれば、それなりの想像もつくのかなと構えることなく臨みました」

――今回の作品で工夫した点は?

「未経験であるのも本人の自由ですから、それをいたずらに揶揄する描き方は避けたかったので、オトナ高校の生徒は“結婚や子作りに強い意欲を持つ者たち”という設定にしました。欲求がありながら満たされずに、うつうつとした部分も抱える生徒たちが、教師の容赦ない難題に必死で立ち向かう姿を、淀みを伴うコメディーとして描きたかったので、会話のやりとりは試行錯誤したつもりです。不器用な登場人物が、真剣にオトナ高校を卒業しようともがけばもがくほど、視聴者がおかしみを感じて共感してくれたらうれしいなと思っています。

それと、モノローグの使い方ですね。なかなか勇気が出ない未経験者が、自分の中であれやこれやとどうでもいいシミュレーションを繰り返したりすることで、“童貞感”を表現できたらなと。

そして、(主人公・荒川英人役の)三浦春馬くんのようなイケメンが実は童貞だという設定に、どうやってリアリティーを持たせるのか。そのために内面をどう設定するのか。そこを作り手側が楽しめたらドラマにも味が出るわけで。それは他のキャストも同じで、彼らが未経験者であり続けた個人史やキャラクターをどう作るかは、作り手側としてとことん楽しみたいと思っています」

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