
ディズニー&ピクサーの劇場最新作「星つなぎのエリオ」(原題:Elio)が8月1日(金)に公開される。同作はこの星々のどこかに自分の居場所があると信じてきた孤独な少年・エリオが、銀河を越えて星と星をつなぐ壮大な冒険と、運命を変える出会いを通し、成長していく姿を描くファンタジーアドベンチャー。ピクサーらしい圧倒的スケールと、繊細な少年の心、家族、多様な宇宙生物たち…一口に語れない魅力がちりばめられている。今回は幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が試写会で同作を視聴し、独自の視点でのレビューを送る。(以下、ネタバレを含みます)
ピクサーらしい心温まる作品
「リメンバー・ミー」(2017年)のストーリーアーティストであるマデリン・シャラフィアン、脚本・共同監督を務めたエイドリアン・モリーナ、「私ときどきレッサーパンダ」(2022年)で監督を担当したドミー・シーの3人が監督を務めている今作。
2024年夏に公開され、世界的な大ヒットとなった「インサイド・ヘッド2」を筆頭に「トイ・ストーリー」シリーズや「リメンバー・ミー」など数々の作品で“みんな違ってみんないい”、“異なる者が互いを尊重しあう”大切さと気持ち良さを伝えてくれたピクサー作品が、またしても心温まる作品を送り届けてくれた。
今作の主人公の名前はエリオ・ソリース。ソリースという苗字を聞いてメキシコ出身の歌手マルコ・アントニオ・ソリースやハビエル・ソリース、コロンビア出身のサッカー選手ジョン・ソリース、キューバ出身のボクサーであるオドラニエル・ソリースなどを思い浮かべる方もいるかもしれない。エリオにはイタリア語で太陽、ソリースにはラテン語で太陽という意味があるらしい。実によく考えられたキャラクター命名でもあるのだ。
このエリオ少年、不幸な出来事から両親を失ってしまった。そして今は、宇宙飛行士を目指して軍の基地で衛星研究の仕事をしている叔母のオルガと暮らしている。
「おばさん」というにはかなり年が若いのだが、しっかり仕事に就きながらエリオにも不自由のない生活をさせようと奮闘している。だが、「突然、親がいなくなってしまった悲しさ」は想像を絶する厳しさ、つらさ、重さだ。しかもエリオは子どもだから、人生経験的にも「死」に対する免疫が少ない。どこにも自分の居場所を見つけることができないまま、毎日を投げやり気味に過ごしていたエリオだが、たまたまオルガと一緒に訪れた「航空宇宙博物館」での、無人探査機ボイジャーに関する展示が彼に光を与える。
僕の居場所は「ここ(地球)」には、たまたま存在しないだけ。宇宙にまで視野を広げれば、きっと居心地の良いところが見つかるさ。まずは宇宙人との交流を始めてみようかな。そんなふうに考えたエリオは、無線機を使って宇宙にメッセージを送るようになる。つまり無気力な少年が、無線の使い方をマスターするまでになった。それほどボイジャーは彼を活性化したのだ。
あいにく宇宙からの返事は来ないが、この場合いつか来ると信じる心があればテンションは保っていられるもの。だがそんな彼をからかう連中がいる。充実したり活気づいていると、心の貧しい悪友が絡んでくるのはファンタジーの中でも変わらない。しかもエリオは彼らのせいで片目にケガを負ってしまう。

思いが高じてついにエリオが宇宙へ
とはいえ、エリオの宇宙への意欲はとどまることを知らない。思いが高じてついに交流に成功、彼は地球から何光年も離れ、星々の代表が集い、よりよいアイデアを交換する「コミュニバース」に赴き、「大いなる勘違い」もあって“地球代表”として歓迎を受ける。
このコミュニバースの風景がまたいい。壮大な宇宙全体から見れば、地球など米粒くらいの小ささである。だからこそ、日本やアメリカ、それこそ地球での常識など通じるわけがない。生き物はこんな色でなければ、とか、目や腕や脚や鼻の穴は二つが普通とか、そんな凝り固まった考えはたちどころに吹っ飛ぶ。多様性と調和が共存する空間は、現実の枠を超えた想像力の結晶であり、見る者の心を広げてくれる。
星々の代表が集うくらいのスケールなのだから当然といえば当然だが、虫歯だから甘い物を控えようとか、ちっぽけなことはバカバカしくなる。それでいて実に平和なところがコミュニバースの良さ。だが、逆に言えばそれを否定する、穏やかではないキャラクターをお断りする勇気も、ここにはある。
戦闘種族のリーダー、グライゴンがコミュニバースに入りたいという意思を示した。力で支配して宇宙王になろうという下心があったのかもしれないが、コミュニバースに“圧”や“暴”は不要なため拒まれる。するとどうだろう、グライゴンの目的は「コミュニバース潰し」へと変化した。
そのグライゴンへの交渉役になったのがエリオだ。というのも彼が「自分なら交渉できる」と大ボラを吹いてしまったからだが、この一言で物語の展開はガラリと変わり、ここから、今まで費やしてきた文字数の何倍もの情報量と密度を持って物語は進んでいく。
中盤以降で準主役的に活躍するキャラクターであるエイリアンの少年・グロードンが発するせりふも可能な限り頭にとどめながら見ていくと、訪れるクライマックスがいっそう深いものに感じられるはずだ。
ほか、コミュニバースの案内係を務める“ハイテクお助けコンピュータ”ウゥゥゥゥが、しずくのような形状、その名前、共に強い印象を刻む。日本版はドラマで見ないクールはない野呂佳代が声優を務めている。試写中は自然過ぎて誰か全然気付かなかった。さすが引っ張りだこの若き名バイプレーヤーだ。
もちろん、この壮大なスケールの物語を創り出すディズニー&ピクサーの力。今作もご多分に漏れず、老若男女がワクワクする映像美だったと、付け加えておこう。
映画「星つなぎのエリオ」は8月1日(金)より劇場公開、ピクサー過去作はディズニープラスで配信中。
◆文=原田和典
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