
近年、国内最大級の格闘技イベント「RIZIN」で、ある男の「副音声解説」が大きな話題を呼んでいる。その主は、お笑い芸人の狩野英孝。ABEMAのPPVで放送されるRIZINの「裏実況チャンネル」にたびたび登場する彼の解説は、SNSでトレンド入りするほどの人気を博している。
格闘技の専門家ではない、むしろ「全くの素人」を公言する彼の解説が、なぜこれほどまでに視聴者を引きつけるのか。話題になった名(迷)シーンを振り返りながら、その魅力に迫る。
格闘技素人だからこそ生まれる「迷言」と「共感」
狩野の解説の最大の魅力は、その「素人目線」にある。専門用語を多用する本解説とは対照的に、彼は目の前で繰り広げられる激闘を、自身の感性でストレートに言葉にする。実際にその名(迷)実況の例をあげてみよう。
※朝倉未来vs鈴木千裕戦は2025年5月4日開催「RIZIN男祭り」、そのほかの試合は5月31日開催「RIZIN WORLD SERIES in KOREA」での実況
「朝倉さんが上になって千裕さんを抱きしめています。千裕さんも足でぎゅってやってます」
「朝倉未来vs鈴木千裕」より。文字だけで見ると完全にボーイズラブの描写だが、朝倉のテイクダウン後の攻防を表した実況。なぜか選手を「さん」付けで呼ぶのも狩野実況の特徴だ。さらに「朝倉海さんもお兄様を見守っています。できれば傷一つつけさせたくない。兄想いの弟」など、試合展開とは無関係に物語が紡がれていくのも魅力。
「速い!見てなかった!見てなかったです!」
「大原樹理vsジョニー・ケース」より。1R2分22秒、ケースが大原を右フックで倒したところでレフェリーストップ。だが前日のケースの体重超過により、試合はノーコンテストとなった。1Rスピード決着の瞬間を見ていなかった狩野は「見てなかった!何が起きたんだ?一瞬よそ見してたら試合が終わってました」と正直すぎる実況。誰も勝ち名乗りを上げないノーコンテストの異様な雰囲気にも飲まれ「正座してる…反省してるのかな?」と困惑。試合後、狩野も「格闘技ってよそ見厳禁なんだな…俺どこ見てたんだろう?終わってたわ」と反省していた。
「黒い人が頭を撫でてますね」
「朝倉未来vs鈴木千裕」より。グラウンドで膠着状態になった際、黒シャツを着たサブレフェリーがロープ外に出た鈴木千裕の頭を内側に戻そうとする様子を見ての実況。このあとも試合中何回か「黒い人が頭を押していますね」「黒い人がヒジでやってます」などの言及があったが、結局最後まで何をしているかはわからなかった様子。
「地から天に昇っていく、まさに昇り龍アッパー!」
「キム・シウォンvs宇佐美正パトリック」より。試合中、宇佐美が鋭いアッパーでシウォンにプレッシャーをかける。そのアッパーに惚れ込んだ狩野はこれを“昇り龍アッパー”と勝手に命名。その後も「昇り龍が当たればアゴ粉砕間違いなし!」「キム選手も昇り龍を見て、ちょっとだけ怖気ついている」「宇佐美選手!昇り龍だ!昇り龍を繰り出せ!」と興奮気味に実況する。試合後、実況席に立ち寄った宇佐美にも「あれ良かったです、昇り龍」とそのまま伝えてしまい、宇佐美は笑いながら「昇龍拳!って感じですね」とノリ良く対応していた。
「わ!キレイ!これ誰?」
「シン・ユリvsケイト・ロータス」より。日韓美人格闘家対決と注目されていた一戦。試合前に淡々と会場の説明をしていた狩野だったが、入場してきたケイト・ロータスの美貌に思わず反応。「こんなキレイな人が殴り合うなんて考えられない!」と興奮気味に実況する。どちらのほうが好みか聞かれた狩野は「難しいよ!でも声かけやすいのは…負けた選手のほうが声かけやすいですよね」とリアルな妄想をしていた。
「これは横木魚ですね!」
「キム・スーチョルvs佐藤将光」より。佐藤の名前が「将光(しょうこう)」で仏閣的なイメージがあると狩野。試合展開を予想するにあたり、佐藤がハンマーパンチで木魚のように相手を打ちのめして「木魚叩きKO」すると予想する。いざ試合がはじまると佐藤が左右のフックを連打。これを見た狩野は「これは横木魚ですね!」と拡大解釈し、その後も「横から木魚!下から木魚(アッパー)!相手を相当叩いていますね」と、終始木魚で実況を貫いた。
狩野「あっと!倒れた!」ケイト・ロータス「倒れて…ないですね」
「キム・スーチョルvs佐藤将光」より。ケイト・ロータスが実況席を訪れ、狩野とともに試合を解説することに。スーチョルが金網に佐藤を押し込み、テイクダウンを狙って膝を落とした動作を、狩野は「倒れた!」と勘違い。秒でケイトに訂正されていた。だがケイトの前だからか狩野は「この体制はどちらが優勢なんですか?」と何事もなかったかのように実況者としての質問をつづけた。
「未来さんは千裕さんを許しません!」
「朝倉未来vs鈴木千裕」より。1R朝倉はテイクダウン後、鈴木の体をコーナー側に運び、動きづらい体勢に。そんな中、鈴木の口から出血が確認される。それを見た狩野は「『これ以上、血を流したくない。これ以上、血を見たくない』そんな思いで千裕さんはなんとか耐えています」と鈴木の心情を想像で代弁。さらに「だが未来さんは千裕さんを許しません!」と朝倉の気持ちまで勝手に実況する。
このように、狩野の実況は自由奔放。「昇り龍アッパー!」「横から木魚、下から木魚」などの勝手なネーミングや女子選手の美貌に驚く姿などは、格闘技の実況としてはNGだろうが、視聴者と同じ目線で興奮を共有しているともいえる。決着の瞬間を見逃したハプニングさえも、視聴者にとっては「一緒に観戦している友達みたいで楽しい」と親近感を抱かせる要因となっているのだ。
ただの“迷”実況じゃない?神がかった「予言」が的中!
狩野の解説が「神実況」とまで呼ばれる理由は、ただ面白いだけではない。時に、専門家も舌を巻くような「予言」を的中させるからだ。
実は5月4日開催「RIZIN男祭り」朝倉未来vs鈴木千裕の1Rで、狩野は鈴木から出血が確認された際に「出血多量であれば、ドクターストップもあるか?」と予想。その言葉通り試合は3R、目尻を切った鈴木の出血がひどくなり、まさかのドクターストップに。この的中がSNS上で話題を呼んでいた。
さらに、5月31日開催「RIZIN WORLD SERIES in KOREA」では「キ・ウォンビン vs. ホベルト・サトシ・ソウザ」の試合前に「サトシさん、1RでKO」「最後は(締め技で)シメて終わる」とホワイトボードに書いて予言。すると、試合はまさにその通りの展開となり、サトシが1R50秒で締め技による一本勝ち。この神がかった的中劇には、本人も「怖いんだけど!」と驚きを隠せなかった。
こうした奇跡的な展開が、彼の解説を単なる“迷”実況から、目が離せない“神”実況へと昇華させているのである。
ゲーム実況にも通じる「最高の観戦仲間」としての魅力
狩野のこのスタイルは、彼が絶大な人気を誇るYouTubeのゲーム実況にも通じるところがある。予測不能なハプニングや天然の発言で視聴者を爆笑の渦に巻き込みながらも、ゲームの世界に没頭し、心から楽しむ姿が共感を呼んでいる。
RIZINの解説でも、彼は専門家としてではなく、一人のファンとして、最高のエンターテイメントを全力で楽しんでいる。その場で感じた驚き、興奮、感動、そして時には恐怖といった感情を、包み隠さず表現してくれる狩野は、まるで「最高の観戦仲間」だ。
狩野も初めてのRIZIN実況の際「はっきり言いますが、格闘技の知識はありません(笑)。ただ、格闘技は華やかでかっこよくて、とても魅力を感じています。なので、格闘技初心者の方、大歓迎です! 一緒にこの副音声チャンネルを見ながら、格闘技の魅力を知っていきましょう! もちろん上級者の方々も大歓迎です。コメント機能があるので、ご指導のほどよろしくお願いします」と、あくまで「一緒に楽しもう」と呼びかけている。
そして視聴者からは「RIZINを見て、こんなに大笑いしたの初めて」「プロの実況って神技なんだな、それはそれとして狩野英孝は天才なんだな」「頼むからこのまま詳しくならないでくれ!」といったコメントが数多く寄せられている。
格闘技の新たな楽しみ方を提供してくれている狩野英孝。次に彼が裏実況ブースに座るのは7月27日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される『超RIZIN.4 真夏の喧嘩祭り』のABEMA PPV、10試合目からラストまで。どんな「迷言」と「神予言」が生まれるのか。今から楽しみでならない。
狩野英孝の副音声実況付き
7月27日(日) 11:00 放送開始|11:30 開始
▼PPV視聴はこちらから































