
海外リメイク企画「コンフィデンスマンKR」の配信が開始になるなど、日本発のエンタメとして世界的な広がりを見せている「コンフィデンスマンJP」シリーズ。2018年のドラマ、そして劇場版は三作すべてが興行的な成功を収めるなど、シリーズを通じて高い人気を誇っていた。なぜ同作がこれほどまでに人を惹きつけるのか…その答えは、脚本家・古沢良太が仕掛けた「二重の騙し」と、それを体現するキャスト陣の華麗な競演、そして圧倒的な「デラックス感」にある。本記事では「コンフィデンスマン」シリーズの魅力について考察してみる。
盤石の成功を支える古沢脚本とコンフィデンスマン・トリオ
「コンフィデンスマンJP」は、腕利きのコンフィデンスマン(信用詐欺師)であるダー子、ボクちゃん、リチャードの三人組が、欲望にまみれた悪徳富豪たちから大金を騙し取るコンゲーム(騙し合い)を描いた物語である。
2018年4月期に放送された連続ドラマから、ストーリーに散りばめられた痛快な仕掛けがSNSを中心に熱狂的なファンを獲得。その熱を受けて制作された劇場版は、作品を重ねるごとに支持を拡大していった。
劇場版第1作「ロマンス編」(2019年)は興行収入29.7億円を記録し、第2作「プリンセス編」(2020年)はコロナ禍での公開となりながらも38億円を超えるヒットに。そして第3作「英雄編」(2022年)では公開初週の全国映画動員ランキングで堂々の初登場1位を獲得するなど、圧倒的な人気と評価を確立している。
物語を牽引するのはダー子を演じる長澤まさみ、ボクちゃんを演じる東出昌大、リチャードを演じる小日向文世の「コンフィデンスマン・トリオ」。単に有名な俳優陣をキャスティングしたのではなく、それぞれが物語のキャラクターにピタリとハマる点も同作の評価を押し上げた。
主演の長澤まさみが演じるダー子はコミカルで破天荒、そして変幻自在に姿を変える女傑。表情や感情のコントロール、“騙す”も“騙されたフリ”も完璧にこなすプロの詐欺師をこれ以上ないほどの完成度で熱演する。
ボクちゃん役の東出昌大は、“詐欺師でありながらすぐに良心に目覚めてしまう”という葛藤をコミカルに表現。どこか抜けていて少しズレた「良い人だけど根っからの詐欺師」を見事演じ、見事にハマった。
そしてリチャードを演じる小日向文世は、作品のトーンを支えるベテランとしての存在感を発揮。変装の達人としてさまざまなシーンで大活躍をする百戦錬磨のコンフィデンスマンなのだが、演じる小日向にも「素のリチャード、というのが一番難しい」と言わしめるほど“掴めない”紳士だ。
個性豊かなコンフィデンスマンたちが繰り広げる物語。その魅力はなんと言っても“ターゲットを騙すだけでは終わらない”点にある。
観客の裏をかく二重構造の衝撃と爽快感
「コンフィデンスマンJP」が他のコンゲーム作品と一線を画すのは、その「どんでん返し」の構成力にある。脚本を手掛けるのは映画「ALWAYS 三丁目の夕日」や「キサラギ」、NHK大河ドラマ「どうする家康」などで知られる古沢良太。古沢は本作で“詐欺師たちがターゲットを騙す物語”と、“物語の構造そのものが視聴者を騙す”という「二重のトリック」を巧みに仕掛けた。この脚本術こそが、シリーズを支える魅力の核となっている。
視聴者はダー子たちが悪徳富豪を騙す過程を、まるで神の視点で見ているつもりでいる。しかし物語のクライマックスやエンドロール後に明かされる「真実」によって、観客もまた詐欺師たちの手のひらで踊らされていたことを知らされる。この「観客も騙される」という感覚こそが、本作が熱狂的に支持される最大の理由だ。
特に連続ドラマの最終話は、こうした構造の最たる例として語り草になっている。ダー子たちがターゲットに仕掛けた壮大な作戦が明かされたあと、さらに今回の物語そのものに“視聴者を騙す”罠が仕掛けられていたことが明らかになるのだ。最後の最後にちょっとしたキーワードで「ということは…!」と鳥肌を呼ぶ構成は、同シリーズの人気を確固たるものにした。
もちろん劇場版でもその構成の妙は健在で、「ロマンス編」「プリンセス編」「英雄編」の3作ではそれぞれに違った方向のサプライズが用意されている。ただ同作はいわゆるミステリーではない。公平に開示された謎の鍵からトリックを推理するのではなく、“騙される側”と同じく開示された情報が“どこまで嘘なのか”を見破るしかないのだ。そして「今度は騙されないぞ」と意気込んで見るからこそ、「まさかそこまでが嘘だとは」と思わされるカタルシスもミステリーとはひと味違う。
たとえばシリーズは「目に見えるものが真実とは限らない」というテーマを深く掘り下げるため、時にダー子たちが失敗したり、逆に騙されて窮地に陥る展開もある。しかしそれすら“次のどんでん返し”の布石で、視聴者に毎回ターゲットたちと同じ驚きをもたらす。
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