
ていが歌麿の元を訪れ、「恋文への返事です」と絵を渡す
蔦重のあまりのダメ出しに耐え切れずに重政が怒り、政演はたまらず「歌さんは呼んでこれねぇの?歌さんならなんとかできんじゃない?」と口にした。
画風を言語化するのはただでさえ難しい。そのうえ、蔦重自身もどんな絵を自分が求めているのか悩んでいたのも確かだ。だがその後、蔦重は歌麿が「婦人相学 十躰」のために書いた下絵のように役者絵を描ければ面白いのではという考えにたどり着いた。政演の言葉、そして蔦重のその考えを聞いたていは、歌麿の元に向かった。
ていは持参した「歌撰恋之部」を床に並べた。歌麿が描いた五図の下絵を、蔦重が彫りと摺りを指示して完成させたものだ。受け取ってほしいと言うていに、「差し上げたものなので」と背を向けたまま答える歌麿。
すると「これは、蔦屋重三郎からの恋文にございます」とてい。歌麿は視線を横に流しながらも、体は動かさずに無言を貫く。ていは「正しくは、恋文への返事にございます」と言い直し、ひと目でも見てくれないかと頭を下げた。
歌麿は並べられた絵の前に座り、1枚を手に取った。ていは、“毛割”といわれる髪の毛1本1本の表現や色味、着物の柄など、摺師と大喧嘩するほどに歌麿の好みにこだわって仕上げたと説明する。
そして、蔦屋の板元印と歌麿の印については、最後まで悩み、「歌さんを立たせるべきだが、自分と歌さんの仲に上下はつけたくはない、肩を並べ、共に作りたいと思っていることを伝えたいと、歌さんの名が上のものが三図、蔦屋の印が上のものが二図と落ち着きました」と明かした。
印については、前回、吉原で蔦屋が上のものを歌麿が目に留めていた。五図という揃い物にして初めて蔦重の思いが伝わった。

蔦重と歌麿の仲を取り持つてい、視聴者から「おていさん、腐女子!?」の声も
本題はそこからだ。「歌さん、よそにもすばらしい本屋はおりましょう。けれど、かように歌さんのことを考え抜く本屋は、二度と現れぬのではございませぬか!」とてい。
ここに至るまで、よその本屋と仕事する歌麿が、絵に何も意見されないことにいらついているさまが映し出されていた。ていの言葉が深く響く。
そんなていは次いで驚くべきことを口にした。「私は出家いたします」というのだ。暇のない蔦重の代わりに、これまで関わった人の菩提を弔うため。しかし、歌麿は「うそだね」とあっさりと見抜いた。
ていは本音を言う。「見たい。二人の男の業と情、因果の果てに生み出される絵というものを、見てみたく存じます。私も本屋の端くれ。サガというものでございましょうか」。
すると、視聴者から「おていさん、腐女子!?」「ここまでドラマを見届けてきた腐女子がおていさんの言葉に首がもげるくらいの勢いでうなずいている」「おていさんには腐女子の素質が大いにある」「こんなところで腐女子の鑑の発言を見ようとは」「おていさんは腐女子というよりは、激重ブロマンス好きの重度のヲタク出版社って感じだ」「強火担だった」といった声がSNSに上がった。“腐女子”とはBLを好む女子のことで、“ブロマンス”とは男性同士の強い絆や関係のこと、“強火担”とは推し強い熱量で応援することを意味する。
歌麿の蔦重への恋心に気付いていたていだけにそんな声も上がったが、本屋の“サガ”として、すばらしい作品を見たいというのが確かな本音。蔦重と歌麿との長い関係の途中からではあっても、そばにいたからこそ、本屋だからこそ分かる2人の才能なのだ。これにより、再び歌麿は蔦重のところに戻ることになり、さらに歴史に残る名作を誕生させていく。視聴者からは「今回のMVP」「おていさん、ありがとう」「おていさんの口説きに胸熱」「おていさん、かっこいい」との称賛も続々と寄せられた。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

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