【テレビの開拓者たち / 前田直敬】日テレ「バズリズム」プロデューサーが語る“音楽番組の存在意義”
作り手が工夫を凝らせば、「音楽番組も必要だ」という人は増えていくはず
――前田さんが企画・プロデュースを務める「アイキャラ」も、新しいもの好きの視聴者の間では、かなり評判になっていますね。
「『アイキャラ』って何というか、不思議な縁に恵まれた番組なんです。音楽を担当してくれているアゲハスプリングス(※蔦谷好位置らが所属するクリエイター集団)の田中隼人さんや、制作のディレクションズ(※NHK Eテレ「ビットワールド」などを手掛ける映像制作プロダクション)の社長の長江努さんは、僕がバップにいたころの仕事仲間で。何年かぶりに飲んだときに、こういう番組をやってみたいと話したら、その場で知り合いのクリエイターに電話してくれてスタッフが決まったりして、日々、人が人を呼んで展開しているというか、所帯は狭いながらも、それぞれ得意分野を持った人間が集まってお互いを引っ張り合ってる、ゴレンジャーみたいな番組なんです(笑)。
今、『ひらがな男子』という新たな2次元キャラクターができて、ゲーム展開も始まりましたし、劇場版の制作も決まって、春先には応援上映も予定していて。この先、2.5次元舞台や海外での展開も考えています」
――では、最後の質問です。現在のテレビ界における、音楽番組の存在意義とは?
「ひと昔前は、寺尾聰さんの『ルビーの指環』を、5歳の僕も、兄貴もおふくろも、ばあちゃんも、みんな歌ってたわけですけど、今は、演歌を聴いている方々がGReeeeNはなかなか口ずさめないですよね。ただ、それは音楽が細分化されているからであって、そのことを憂いても意味がない。だから、音楽番組がなかなか視聴率を取れないという現状は、仕方がない部分もあると思うんです。けれど、世の中から音楽がなくなることは絶対にないし、音楽には他のジャンルではできないこともいっぱいある。だから、視聴率というものにこだわりすぎず、僕ら作り手が工夫を凝らせば、きっと『音楽番組も必要だ』という人はまだまだ増えていくと思うんですよ。手前味噌ですけど、『バズリズム』の展開の仕方も、その一助になっているという自負はありますね。
今、『アイキャラ』を作っていて、『前田さんがそんなにオタクだったとは知りませんでした』なんて言われたりもするんですけど(笑)、極論を言ってしまえば、僕が『アイキャラ』で実績を作ろうとしているのは、音楽番組を盛り上げるための環境づくりの一環でもあるんですよね。『アイキャラ』から生まれたキャラクターは、いわば日本テレビに所属しているアーティスト。『ひらがな男子』が将来、初音ミクのような人気キャラに育っていったら、『ベストアーティスト』や『THE MUSIC DAY』に、『アイキャラ』の番宣じゃなく(笑)、ちゃんと世の中から求められる形で出演する日が来るかもしれない。ゲームや映画で放送外収入も生んで、“(c)日本テレビ”のアーティストも輩出して、そうしたら、日本テレビはトータルでハッピーになれるわけじゃないですか。そう考えれば、音楽番組はテレビ局にとっても、絶対に残すべきコンテンツだと捉えられると思うんです」