どうしても先に実写化されたものがあると、その後に放送されるドラマは比較されてしまいがち。特に前の作品のクオリティーが高いと、次に続く作品のハードルは上がってしまうもの。
当然本作のキャスト、スタッフの方々も相当なプレッシャーと闘っていると思うが、一足先に映像を見せてもらった限り、何の心配もなさそうだ。もちろん原作ありきなのだが、完全に新しい「海月姫」の世界として、キャラクターそれぞれが“生きて”いた。
まず主演の芳根。冒頭で書いた通り、多少贔屓目で見てしまうところはあるが、それはさておき、絶妙な“気味の悪さ”を表現していた。
これまで彼女が演じてきたキャラクターは、“正統派”というか、天真らんまんというか、快活なイメージだったので、今回のような個性派キャラはどうなるのかとドキドキしていたが、あっさりと予想のはるか上をいってしまった。そりゃ、“オーディションで出会いたくない女優No.1”と言われるわけだ。
地味過ぎるジャージ姿もドンピシャでハマっていたし、鹿児島弁に“オタク”らしさを存分に出す早口言葉のクオリティーも秀逸、歩き方も絶妙にオタクっぽさを出し、それこそオタク系女子っぽいしぐさが絶妙…完璧に月海だった。
もちろん“変身”後はそらもうべっぴんさんだ。個人的にはある場面での、「オ・レ~♪」ダンスと、部屋のベッドにナナメから飛び乗る姿に最高に笑わせてもらった。
そして、この完成度がドラマを左右すると言っても過言ではない、瀬戸の女装姿もあっぱれ! 既に写真・映像ビジュアルも解禁されており、その美人っぷりに「男でもドキドキする!」「女だけど負けた…」などとSNSが騒然としているが、ストーリーを追って見ていくとますますその女性らしさに驚いた。
女装はもちろん顔も大事だが、足元や立ち居振る舞いが何よりも難しい。以前筆者も宴会芸の一環で挑戦したことがあるが、すね毛の濃さとガニ股であっさり黒歴史入りしたほど。
まあ、そもそも瀬戸とはビジュアルの次元が違うのだが…。瀬戸の立ち居振る舞いや足元は完全に女性そのもの。恐ろしく小顔だし、見詰められたら間違いなく照れるだろう。さすがに声は瀬戸だったが、そこはそもそも別に意識して女性っぽくしているわけではないキャラなので、当たり前っちゃ当たり前だ。
逆に言うと、消音でドラマを見たら男性だと見抜ける人は少ないんじゃないかな。月海がだまされてしまったのも、ある意味無理ないのかも。
そして、月海を除いた4人の尼~ずの面々。4人中3人前髪長い系女子で、再現度もすさまじく高いので、一瞬誰が誰だか本当に分からない! 特に内田理央と松井玲奈は、事前情報がなかったらこれ誰が演じているんだろう?って、エンドクレジットを見るまで分からなかったのではないだろうか。はじけっぷりがガチだ。
もちろん、木南晴夏と富山えり子も玉露の緑茶くらいいい味を出している。ジジ様(木南)のお茶のすすりっぷりや和物オタク千絵子役の富山の肉へのリアクションなど、書きだしたらきりがない。4人とも演技が抜群なので、これは1話から心を奪われてしまう人が続出しそう。
その他、蔵之介(瀬戸)の弟・修役の工藤亜須加は、失礼ながら“童貞キャラ”がよく似合っていた。特に、月海に一目ぼれする瞬間の表情には注目してほしい。お茶を飲みながら見たら84%の確率で噴き出すだろう。筆者も3回見て2回は噴き出した。
蔵之介&修兄弟の父・慶一郎を演じる、意外にもこれが初“月9”出演の北大路欣也の「私のにくぅ~!」もキュートだし、花森さん(要潤)のクセの強い運転手っぷり、仕事探しは…いや、泉里香のもっとクセの強いグイグイ系キャリアウーマン、チョイスがニクい“たけ”さんの「たけ散歩」。
第1話からここまで小ネタをちりばめられると、毎回何度も見なきゃ損をしたような気分にすらなっちゃいそう。
さしずめ特上A5ランクの松坂牛くらいニクい(?)芳根の絶妙な“オタク女子”演技と、彼女を取り巻く“高級食材”の数々が絶妙にマッチし、毎週月曜夜9時からはフジテレビで夢のすき焼きパーティーが開催されそうだ。
いや、何のこっちゃ。
文=人見知りシャイボーイ
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