トランスジェンダーだけど、それ以上に1人の女性
――「女子的生活」は、1月19日(金)放送の第3回と、1月26日(金)放送の最終回の残すところあと2回となりました。ドラマ全体を通して、お2人が視聴者の方々に伝えたいことはなんですか?
志尊:このドラマのお話をいただいた時「トランスジェンダーの役です」と言われて、僕自身も最近よく聞く言葉だけど、具体的にどういうことなのかが正直分からなかったんです。撮影に入る前はトランスジェンダーの当事者の方々を背負っている気持ちで、責任を持って、このドラマが当事者の皆さんのことをもっと知っていただける機会になればいいなという気持ちでした。
でも今は自分の気持ちがすごく変わってきています。“何かを伝えたい”というようにこちらの考えを押し付けたくないというか。
本当にみきって、もちろん女性なんですけど、みきという確立された存在という感覚があって。みきを演じたあとに、彼女がトランスジェンダーって言われることに対しても、なんとなく抵抗を感じるようになってきて。
西原:「女性」だからね。
志尊:トランスジェンダーという言葉を聞きすぎて「なんか違うな」って思ったんですよ。僕は今、この作品が持っているメッセージ性であるとか、みきちゃんという人物の生き方を見て、視聴者の皆さんに何かを感じ取ってもらえればいいなと思っているだけです。ドラマの後半の撮影では、みきとして生きることしか考えなくて。
実際にドラマがオンエアされて、たくさんの方に反響やご意見をいただいて、皆さんがいろんなことをドラマから感じ取ってくれたこと、僕はそのひとつひとつがうれしくて。「かわいい」でも「キレイ」でもすごくうれしくて。この作品を見ていただいて、何か届いているというよりも、この作品を見てくれたことに、僕はうれしさを感じるんです。
伝えたいことはたくさんあるけど、それを僕が言葉にするのは違うのかなって最近は思っているんです。“ここを見て欲しい”ではなくて、ドラマを見てその人がどう感じてくださるかが全てだと思います。僕がすごく大好きなこの作品が、いろんな人に届けばいいなという気持ちでいますね。
西原:みきはトランスジェンダーって言われていますけど、それ以上に1人の女性なんです。
私自身も、実際にトランスジェンダーということを公表して、いろんな活動をやらせていただいていますが、正直プライベートで「私はトランスジェンダーだから」って思わないんですよね。忘れちゃうくらいですし。私以外にもそういう当事者って多いと思います。
最初のお話に戻っちゃいますけど、女の子が感じている楽しい部分、ファッションやメイクが好きなところとか、そういう部分をすごく見て欲しいですね。「トランスジェンダーです」というと、どうしても“お涙ちょうだい”が多いんですけど、それだけだったら、別に性別を変えても楽しくないじゃないですか? 私もそんな世界しかなかったら生きていて楽しくないんですよ。
だけど今、私もこうやって女性として生活をして「トランスジェンダーです」とあえて言っても“女の子を楽しむ”ことがそれ以上に価値があることなんです。みきちゃんはまさにそこを体現してくれていて、それってトランスジェンダーの当事者だけじゃなくて、生まれながらの女の子も見ていて絶対に共感できる部分なので、そういう意味では性別とか生まれた性は関係なく、いろんな人に届いてほしいです。
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