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大江千里、新アルバムで「グラミー賞」狙う【インタビュー後編】

2018/02/04 11:00

大江千里が最新著作「ブルックリンでジャズを耕す 52歳から始めるひとりビジネス」を発表
大江千里が最新著作「ブルックリンでジャズを耕す 52歳から始めるひとりビジネス」を発表 撮影:奥西淳二

NYに10年住んで見えたことと自分自身の変化


――NYで活動を始めて丸10年。この10年で物事の見方や考え方が大きく変わった部分はありますか?

「能動的に物事をいいほうに転換させて、プラスに話したりプラスにプレゼンテーションをして、論理的に物事を組み立てるようになりました。決してエモーションが小さくはならないんだけど、この中身はどういう人に向けて、どんなふうに投げかけたら伝わるんだろう?ということを、ああでもないこうでもないと考えています」

――どういう経緯でそうなられたんですか?

「さまざまな人種が暮らす合衆国の各地に行って、演奏したり人々と触れ合う中で論理的にならざるを得なかったんだと思います。それまでは、自分はアジア人だからチャンスが限られてるとか、アメリカで生きていくのは想像以上に厳しいとか、足りないものを並べ立てて四苦八苦してた時期が少しあったんですね」

――マイナスの固定観念に縛られていたというか。

「でもある日、コップの水が残り少なくても『ここまで入ってる』というプラスの発想で物事を見たら全然違う景色が見えた。当たり前なんだけど、伝え方次第で伝わり方が変わることに気付いたんです。たとえばアフロアメリカン(黒人)が多いアトランタにいくと、その土地に合ったオーディエンスとのコミュニケーションというのがあります。でも同じアトランタでも、お客さんが全員アングロサクソン(北方系の白人)だった場合、『こないだアトランタでこういうライブに出たんだけどね』という話をしてもそれは黒人の社会のことだからシーン…となる。場所が変われば人々の習慣も価値観もまったく違うんです」

――なるほど。

「そういうことを知ってから、この場所ではこの選曲にして、ここを目標に畳み込んでいくMCにしようというふうに論理的に構成すると、お客さんから返ってくるものも違って次の仕事につながるようになりました。もちろんドイツ人でもビールが大っ嫌いなヤツがいるように(笑)、どの人種にもいろんな人がいます。だけど“総じてこうだよな”という社会の特徴みたいなものもある。みんなが関わり合って成り立っているその複合社会の中で、見えないヒエラルキーをどう渡り、味方につけていくか。NYに来て10年目の2017年は特に、僕の中ではその試練をくぐり抜けて試験にパスしなきゃいけないような大きな過渡期だったと思います」

――それはアメリカに10年住み、アメリカ各地や南米、メキシコ、ヨーロッパなどをライブで回って肌で感じなければわからなかった部分でしょうね。

「だからニュースクールを出てから、また違う複合社会というもっと複雑な学校で学んでいる感じ(笑)。自分が行って感じたことを、いま一個ずつ単語帳をめくるように覚えて、一度知ったらミスを繰り返さないようにする。音楽を作るのと同じようにライブも、どの人々に向けてどの土で、どの種を植えていくかということも考えながらやっています。そうやって少しずつドアを開けて、次の場所へ入っていっているところです」

――そんな地道で地に足着けた活動が自信につながっていくんでしょうか。

「昔NYに来たばかりの頃、『What your name?』って聞かれて『Senri』(漢字の意味はthousand miles)と答えると、『はあ? Senri? キミはどこからきてどこへ行こうとしているんだい?』ってよく聞かれたんですね。でも当時の僕は、『日本から来て、ええと…(もごもご)』という感じ(笑)。日本から来てグラミー賞を獲るつもり、と言っちゃえばいいのに、そんなこと言ったら笑われるんじゃないかと思って言えなかった」

――でも今はーー。

「そういう迷いが一気に吹き飛びました。え? だってそのために頑張りにきてるんじゃん?と(笑)。4枚目のアルバム『answer july』(2016年)はグラミー賞のジャズボーカル部門でコンシダレーションに入りましたし。いま踏み出しているプロセス自体がもう夢なわけだから、全部のエネルギーでそれ頑張ろうよ!と。そんなふうに去年は思考も訓練されましたね」

下に続きます
【プロフィール】
大江千里
1983年にデビュー。2008年ジャズピアニストを目指し、NYのTHE NEW SCHOOL FOR JAZZ AND CONTEMPORARY MUSICへ入学。2012年7月、ジャズピアニストとしてデビュー。2013年には自身が率いるビッグバンドで東京JAZZに初参加。2016年夏、4枚目にして初の全曲ヴォーカルアルバム『answer july』を発表。現在、ベースとなるNYのみならず、アメリカ各地、南米、ヨーロッパでライブを行いながら、アーティストへの楽曲提供やプロデユース、執筆活動も行なっている。2017年12月『「9番目の音を探して」~大江千里のジャズ案内 』をリリース。2018年2月14日にDVD「Answer July~Jazz Song Book~JAPAN TOUR2016」が発売。

ブルックリンでジャズを耕す 52歳から始めるひとりビジネス |カドカワストア |

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