「度肝を抜かれました」阿部寛を感嘆させた映画「空海―」の世界観
染谷将太くんは本当に大変だったと思う
皇帝に信頼されていた仲麻呂だが、次第に皇妃・楊貴妃(チャン・ロンロン)にひそかに思いを寄せていく。
「玄宗(チャン・ルーイー)から信頼されている側近なのですが、楊貴妃にひかれてしまい、あろうことか思いを告げようとする。そんなところに人間的なモノを感じました。完璧な人間なんてあり得ない。特に気持ちなんていつどうなるか分からないもの。そして楊貴妃という存在がそうさせたのも何か分かります。楊貴妃は美しいだけではない、不思議な魅力の持ち主で多くの人々を魅了した唐の都の象徴的な存在だった。ちなみに、なぜ仲麻呂が玄宗を裏切ってまで思いを伝えようと思ったのか、監督の意見を聞いたんですが、言葉の壁で通訳されても細かいニュアンスは理解しきれず、それ以上聞くと怒られそうなので、もやもやした気持ちで演じましたが、それが玄宗と仲麻呂と楊貴妃の関係のようで逆に良かった(笑)。中国語でのセリフに関しては、仲麻呂は前に出る職務ではないため、セリフも一言二言。日本語だと照れくさい言葉も、中国語だとやりやすかったです。染谷くんは本当に大変だっただろうし、すごいなと思いました」
全編を通じて、チェン監督の妥協を許さないこだわりのセットや、大胆な演出と繊細さが光る作品に。
「“極楽の宴”のシーンは、実際にこの世のものではない空間が広がっていて、声が出るほど度肝を抜かれました。今はCG技術が優れているので、逆にCGに見られてしまうんじゃないか?と思ったほど。隅々までこだわったアートのような空間で演技ができるのがうれしかったです。色彩もスゴイですよ。幻想的でアートを思わせるような映像美ばかり。そして、その美しさの中に人間のドロドロとした思いや殺意が見えてくる…。本当に見事だと思います。こんな作品に参加できたことが何よりもうれしい。僕のシーンは、回想シーンなので、静寂なイメージかな?と思ったらそうではなかった。すごくパワフルに出来上がっていて驚きました。空海と白楽天という若い2人の推理冒険劇ですが、そこにある、チェン監督ならではの色彩美と厳格さも味わってもらいたいです」