【テレビの開拓者たち / 角井英之】「アンビリバボー」生みの親が語るテレビの未来
「アンビリバボー」は、特番を毎週放送するような無謀な企画。でも、あえて挑んでみようと
――「平成教育委員会」のレギュラー放送が終わり、その後を受けてスタートしたのが、現在も続く「奇跡体験！アンビリバボー」ですね。今年で放送21年目という長寿番組となりましたが、この番組を立ち上げた経緯は？
「『こんなすごい人がいた』『こんなすごい体験をした人がいた』といった実話を、ある程度の手間隙をかけて作った“再現ドラマ”で紹介するという番組は、『アンビリバボー』が始まるまでは、期末期首のスペシャル番組くらいしかなかったんですね。また、そうした状況に加えて、当時のテレビの作り手の意識の中では、これはドラマ、これはバラエティー、というふうに、きっちりジャンル分けされていた。バラエティーだけをとっても、例えば、お笑い番組と音楽番組は全くの別物と考えられていた時代でした。だから、その壁を取っ払った、各ジャンルのいいところを寄せ集めたような番組があったら面白いんじゃないか、そういう番組が毎週あったら楽しいよなぁ、と。そんな思いから考えついたのが、『奇跡体験！アンビリバボー』の企画でした。いわば、特番を毎週放送するような無謀な企画ですが、バラエティーの新しい形を作るためにも、あえて挑んでみようと思ったんです」
――その「特番を毎週放送する」という形が定着し始めたと感じた瞬間はありましたか？
「それはだいぶ後になってからじゃないですかね。取り上げるネタがどのくらいあるのか、番組も1クール持たないんじゃないか、そんな不安を抱えたままのスタートでしたから。それこそ初期は、2週先の放送内容も決まっていない、なんてこともありましたからね。最初は考えていなかった心霊体験を取り上げてみたり、いろんな挑戦を続けてきた結果、気付いたら20年経っていた、というのが正直な実感です。
ただ、数年経ったときに、ふと思ったことがあって。『地球ってこんなに大きくて、こんなにたくさんの人間が住んでいる。そして、みんなそれぞれ自分の人生を必死に生きている。だから、番組のネタだって尽きないはずだ』と。そう考えたら、何だか前向きな気持ちになってきて。そもそも、『奇跡体験！アンビリバボー』というタイトルの下では、何をやってもアリなんですよね(笑)。見ている方々に『信じられない！』と感じてもらえればいいわけですから。そう考えると、例えば、音楽にまつわる“アンビリバボー”な面白いエピソードを見つけたら、その1クールは音楽番組になったっていいわけです。ですから、これからも番組の内容はどんどん変わっていくと思いますね」
――では最後に、“テレビ界の未来”、“テレビというメディアの可能性”について、角井さんの考えをお聞かせください。
「昔のテレビは、家に帰ってきて、リビングで、家族全員で見るものだったわけですけど、今や、自分の部屋で一人で見ることが当たり前。しかも、地上波のテレビ番組以外の映像も、PCやスマホで見られる時代です。視聴形態も様変わりして、映像媒体も増えてきた中で、われわれテレビの作り手にとって、今はチャンスの時でもあり、試練の時でもあると思うんです。
テレビはつまらない、古い、ダサい…という若い人の声があることも確かですが、僕は正直、あんまり気にしていないんですよね。地上波のテレビはやはり、いまだにお子さんからお年寄りまで世代を問わず、ものすごくたくさんの方々が見てくれているメディアだと思うので。総世帯視聴率が下がってきたといっても、録画や見逃し配信で見ている人も大勢いるわけですし。だからわれわれは、今でも多くの人が見てくれているんだということを糧に、変に萎縮することなく、真摯に番組を作っていくしかないんじゃないかなと。『テレビってやっぱりすごいんだ』と信じることが大事なのかなと思いますね」
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毎週木曜夜7:57‐8:54 フジ系
撮影＝源賀津己／取材・文＝佐藤ろまん
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