独断と偏見のレビュー
連ドラシリーズ第3弾にして、シリーズ最大の人事異動があった今作。既に発表されていたが、新キャストとして萌奈佳(安達)と奥野(塙)が入り、前回から平井(斉藤由貴)と刑部(田中圭)が外れた。
それにどう触れるのかと注視していたが、冒頭でしっかり説明してくれる。しかもどうやらどちらも栄転のようだ。そのあたりが、このドラマの温かいところ。
何の説明もなくいなくなっていたらリアリティーもなくなるし、それぞれファンのついていたキャラクターだっただけに、不買運動ならぬ不視聴運動が起こりかねない。
特に筆者含め“大福ロス”の人たちに向けて、人事異動で今後戻る可能性も含みを持たせるあたりニクい。
それで注目の新キャスト。個人情報を押しつけがましくなく説明するのは“木8”の十八番だが、今回もしっかりせりふで説明し、人となりやこのポジションにくるまで何があったのかを紹介している。
運転担当の奥野に関しては、一見とぼけているようなキャラに見える…のは普段の活動に引っ張られているだけかもしれないが、意外とキレ者でしっかり者というギャップがある。
ただ塙が真面目に演技をすればするほど、どこかでボケるんじゃないか、どこかでヤホー検索をかけるのではないかと、ハラハラ見てしまう。それが狙いか…。
一課長の「ブランク」というあだ名もそうだが、そもそも「おくのちかみち」だったり、「やなかもなか」だったり、あだ名の「ケイブ」や「大福」…、このドラマのネーミングセンスについて、プロデューサー氏に小一時間問い詰めたいところだ。
もう1人、同情するならの安達が演じるのは、警視庁広報課セルフブランディングルーム室長・谷中萌奈佳。
彼女の過去についてはおいおいオンエアで見てもらうとして、回想シーンで披露したコスプレの数々はファン垂ぜんのそれ。
特にセーラー服が、もう違和感なさ過ぎて衝撃のレベル。30代中盤でここまで学生ルックが似合う人は、世界を見渡してもいないだろう。
まさに“現役バリバリ”のビジュアルに、オンエア後は「安達祐実、セーラー服姿披露で大反響」的なネットニュースが乱立しそうだ。
そんな安達と主演の内藤といえば、「家なき子」(1994、95年、日本テレビ系)での強烈な父娘役が思い出される。しかも今回、それ以来の連続ドラマ共演というのも大きな話題になっている。
先日のイベントで、内藤は安達について「仲が悪いと思っていらっしゃる方も多いようなのですが、そんなことないんですよ! この『警視庁・捜査一課長』が僕らにとって新しい代表作になればいいなと思っています」と“不仲説”を一蹴する告白をしていた。
そう前向きに語る2人の関係が垣間見える役の関係性・空気感はすぐに感じ取れそうだ。
そして何よりある場面で映る萌奈佳の仕事部屋のシーン。一瞬なので見落としてしまいそうなのでヒントを出しておくと、写真立ての犬に要注意だ…。スタッフさん、やりおったな。
ちなみに、安達演じる萌奈佳は、あのルックスでズバズバ歯に衣着せず発言するキャラ…まさに「“ドMさん”いらっしゃい!」的な要素もありそうだ。
ドMといえば、これまた新キャラの陽月華演じる捜査一課管理官・板木望子。これまたクセがすごい。だまっていればクールビューティーなのに「命令してください。多少強めでも構いません」って…ボケなのかマジなのか分からない表情でこれを言われたら敵わん。
それ以外では、最近出るドラマ出るドラマやたらと若いころの回想シーンが漏れなく付いてくる中村梅雀。今回もまた絶妙にそれっぽい風貌で若かりしころの回想シーンが飛び出す。
ほか、高島礼子はもちろん田中美奈子や相島一之らのサスペンスドラマには欠かせないバイプレイヤーに加え、“黄色い服の男性”ことダンディ坂野や、いとうあさこの個性派キャスト。
おなじみの「必ずホシを挙げる」に加え、とてつもなく気が遠くなる捜査、実は何でもできる鑑識・武藤(矢野浩二)、笹川刑事部長(本田博太郎)の「大岩純一捜査一課長」フルネーム呼びに、大岩家での癒やしのひととき…と、“捜査一課長あるある”は今回もある。
「大福、大福買ってきたぞ」から始まる一連の“もぐもぐタイム”がないのはちょっと寂しいが、大福ロスなんて感じさせないくらい良い意味でツッコミどころ満載の初回となっている。
タイトルを見ればいわゆるお堅い刑事モノのようなイメージを持たれてしまいそうだが、実は決して堅苦しくなく、小ネタ満載で気楽に見られるギャップが本作の最大の魅力なのかもしれない。
また長々と中身のない話をしてしまったが、会社員の宿命。長々と書いたところで褒められたりけなされたり、怒られたり、同情されたりするだけで、特にボーナスがもらえるわけではない。
だからこそ、あの言葉がズシンと効いてくるし、深い共感を覚える。
「同情するならカネをくれ」
文=人見知りシャイボーイ