CS放送の映画専門チャンネル、洋画★シネフィル・イマジカでは、映画情報バラエティー「浅草映画研究会」を放送中。番組では、毒舌かつ切れ味鋭いトークに定評のある浅草キッドの水道橋博士と玉袋筋太郎、映画やマンガ、ジャズなど幅広い分野に造詣が深い学習院大学教授の中条省平が、毎月放送されるおすすめ映画について語り尽くす。笑えてためになる映画談義は、昨年12月には書籍化もされ、大きな反響を呼んでいる。3人に番組について、映画について話を聞いた。
―――まずは番組の趣旨を聞かせてください。
水道橋「大学の先生が映画を解説して、それに漫才師が茶々を入れると。デートのためだったり、娯楽のために見るのとは違う映画を研究する“映研”なんで」
玉袋「タイトルの通りですかねえ…（笑）」
中条「僕は本当に楽しくやらせてもらってます。とにかくお2人の反射神経はプロなんで、その反射神経についていけば番組はできてしまう（笑）」
―――テレビの映画解説といえば淀川長治さんがいらっしゃいましたが…。
水道橋「淀川さんは本来“映研的”目線の解説者なんだよ。でも今の映画番組はデートで見る作品の紹介番組になってるから。そうじゃないものはあったほうがいいと思う。今、映画を見るって暇つぶしなんですよ。だけど映画を“監督”で語ったり、作品の深い部分に踏み込むと、それは社会論にもなっていくし、大きく輪が広がっていく」
―――1本の映画についてじっくり語れるというのは、地上波の番組ではなかなかないので、こういった番組は貴重ですね。
中条「映画を見ることは一過性の娯楽なんですけれど、そこから一歩踏み込んだとき、意外に情報がない。例えばDVDをレンタル屋さんで借りてきて面白いと思っても、監督が誰なのか、出てる人が誰なのか詳しく書いてないんですよね」
玉袋「それなのよ！ だからオレ嫌いな映画館があるんだよ。そこは映画のパンフレットやサントラなんかの関連グッズが置いてなくて、その代わりポップコーンとかナチョスばかり売ろうとしてる（笑）。それが頭くるんだよな」
中条「例えば野球好きの人が野球の試合を見に行ったときに選手の名前を覚えるのは常識ですよね。それと全く同じで、スタッフや俳優の名前を覚えて、じゃあ今度別の映画を同じ人が出てるから見ようという風に、知識のネットワークが出来上がっていくのが一種の『映画的教養』です。その支えになればという気持ちはあります」
―――博士さんがこの場でやりたいことは？
水道橋「映画＝楽しい！ エンターテインメントだ！ という誤解を何とか解きたい。ひとりで見て、打ちのめされて嫌な気持ちがして、『このやるせなさはどこにいくんだ！』っていう理不尽さも映画なんだって思う。フェデリコ・フェリーニ監督の『道』（'54年）は今のフェミニズムからいうとひどい話だけど、共感するんですよ」
中条「やっぱり芸術ってそういうもんですよね。日常生活では迷惑な人間が映画で見ると英雄になるという逆説が、つい僕らが映画を見たくなる、小説を読みたくなることの一番大きな要因ですよね」
―――では最後に、みなさんのベスト1映画を教えてください！
中条「僕はクリント・イーストウッド主演、セルジオ・レオーネ監督の『夕陽のガンマン』（'65年）。子どもでもわかるアクションの鋭さの向こう側には、黒澤明の存在がある。そういう映画的な教養があるんですね。映画ってかっこよくて面白くなきゃいけないけど、それだけじゃないものがあの映画にはありました」
水道橋「『太陽を盗んだ男』（'79年）ですね。長谷川和彦監督、ジュリー（沢田研二）主演。東京に出るとき、ビートたけしのところに行くか、長谷川和彦のところに行くか悩みましたからね。最近、長谷川監督とよく話をするけど、『お前よかったなー、あの選択は。あれ以来1本も撮ってねえんだから』って言われた（笑）」
玉袋「僕はスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』（'75年）。ガーっとサメが出てくるヤツ。あれは驚きました。僕はたけしさんのところに行くかスピルバーグのところに行くか迷いましたよ（笑）」
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
5月1日（土）朝9:30-10:00ほか 洋画★シネフィル・イマジカにて放送
※5月に取り上げる作品はフェデリコ・フェリーニ監督『道』
洋画★シネフィル・イマジカ公式サイト
http://cinefilimagica.com/
