
Stray Kidsのフィリックスが、9月15日に26歳の誕生日を迎えた。端正で中性的なビジュアルと、腹の底まで響く低音ボイス、そしてバラエティー番組やSNSで見せるやわらかな笑顔。いくつものギャップを併せ持つフィリックスは、今や音楽だけでなく、ファッションや社会貢献の分野でも存在感を放っている。
サバイバル番組での脱落を乗り越えてつかんだ“居場所”
5月15日に劇場公開された「Stray Kids : The dominATE Experience」(ディズニープラスで配信中)は、Stray Kidsのワールドツアー「dominATE」の一環として、米・ロサンゼルスのSoFiスタジアムで開催された公演を中心に、アデルやテイラー・スウィフトら世界的アーティストのライブ映像を手掛けてきたポール・ダグデール監督らが、最新のカメラワークと音響で圧巻のステージを映し出したドキュメンタリーフィルム。独占インタビューでこれまでフィリックスが抱えてきた迷いも明かされている。
フィリックスは、オーストラリア・シドニー出身の韓国系オーストラリア人。本名はFelix Yongbok Leeで、韓国名はイ・ヨンボク。現地でJYPエンターテインメントのオーディションに合格し、家族や慣れ親しんだ環境から離れて韓国へ渡った。しかし、彼を待っていたのは言葉の壁だった。2017年に放送されたサバイバル番組「Stray Kids」では、韓国語の発音などを理由に脱落。一度は涙ながらにメンバーと別れたものの、最終審査への参加が認められて復帰し、2018年3月にStray Kidsとして正式デビューを果たした。
ライブドキュメンタリー映画のインタビューでは、18歳の頃を振り返り、この道に進むために学校を離れるなど、多くのものを犠牲にしたと告白。その後、夢をかなえたものの、「自分が何者なのか分からなくなった」「なぜここにいるのか、なぜ続けているのか」と自問する時期があったことを明かすと同時に、それを乗り越えたからこその強さも感じさせる。
フィリックス最大の武器は、甘い顔立ちから放たれる深く響く低音ボイスだ。映画の中で本人も「見た目と声の違いに驚かれる」と語っているが、2020年のヒット曲「God’s Menu」では、“five-star Michelin”と刻む短いパートが強烈なフックとなり、一声で世界中のリスナーにその存在を印象づけた。また「MANIAC」や「CASE 143」でも、彼の低い声が入った瞬間に楽曲の雰囲気が一変するほどのインパクトを与えている。
加えて、ソロ曲の「Deep end」では、傷ついた心を静かな歌声で描き、「Unfair」では低音に加えて甘く柔らかな歌声も披露し、表現者としての幅を広げている。
さらに、彼の魅力は声だけにとどまらない。リノ、ヒョンジンと共にダンスライン“DANCE RACHA(ダンスラチャ)”を担い、長い手脚を生かしたダイナミックな動きと、指先まで意識を行き届かせた繊細な表現で見る者を魅了している。
自分の経験を、誰かを照らす力に
普段は穏やかで人懐っこく、メンバーやファンを明るくすることから“サンシャイン”の愛称で親しまれているフィリックス。お菓子作りが好きで、手作りのブラウニーを周囲に配るという、かわいい一面もある。
その一方、映画では「人を助けるためには、まず自分自身を助けなければならない」と語った上で、自らをチームで最も感情的な人間だと分析。それでも「自分の仕事、目的、使命は何か」と問い続け、今は暗い時代だからこそ「誰かに小さな光を灯し、みんなの光になりたい」と語っている。
その思いは行動にも結びついている。2024年にはラオスの子どもたちを支援するため、ユニセフ韓国委員会に1億ウォンを寄付し、現地で子どもたちとの交流も深めた。2024年と2025年の誕生日にもユニセフなどへ寄付を行っており、2025年にはサムスンソウル病院、ユニセフ、ワールド・ビジョンに計2億ウォンを寄付。「子どもたちが自由に夢を見られますように」という願いを伝えた。
フィリックスは、一声で会場の空気を変えるスターでありながら、迷いや痛みを隠そうとはしない。むしろ、その経験を世界のどこかで悩みを抱える誰かに安らぎと光を渡す力へと変えようとしている。天使のようなビジュアルや心をつかむ声だけでなく、その姿勢にこそ、彼の最大の魅力がある。
◆文=及川静
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
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