一方、本作の笑いの真骨頂は「シチュエーションのうまさ」だと証言するのが、番組プロデューサーの草ヶ谷大輔氏だ。
「古沢さんの脚本は、せりふももちろん面白いんですけど、シチュエーションでコメディーを作ることが素晴らしくお上手だと思うんです。ある状況に置かれたときに、ターゲットが落ちていく、だまされていくさまだったり、この場面でこのせりふを言うのか、というところに面白さがあるんです」(草ヶ谷P)
それは、4月16日放送の第2話で、ダー子たちのターゲットとして登場した、リゾート会社の冷徹な社長・しず子(吉瀬美智子)とのシーンにも表れたという。
「吉瀬さんが議員秘書に変装した小日向さんからリゾートを造る場所を聞き出そうと、(リゾート会社の社員に扮する)ダー子が(その設定の)過去を告白する場面。長澤さんも小日向さんもお互いが成り済ましたキャラクターを演じている空間で、吉瀬さんだけが、2人が詐欺師ということを知らない。お二人の真剣な演技で出来上がったシチュエーションの中で、実は吉瀬さんがだまされているというところが面白いんです」
詐欺師ものだからこそ、“本物とは何か?”という真摯(しんし)な問いにも踏み込んだ。古沢氏はいう。
「偽物に成り済ましたり、偽物を作って売ったり、ないものをあるように見せかけて売るのが基本的な詐欺のやり方なんですけれど、それを追求していくと『じゃあ、本物とは何か?』ということがテーマになってくることが多くて。
スポーツの本質は何かとか、家族編では家族の本質、何をもって家族と言うのかとか。本当の医者や、本当の美術・芸術って何かとかね」
荒唐無稽で“何でもあり”の「コンフィデンスマンJP」だが、実は奥深くはかり知れないテーマをはらんでいるのだ。
そんな大きなものを背後に隠しつつ、ダー子たちは縦横無尽に突き進む。
「“本物とは何か”、それに対する明確な答えなんかないということがテーマだったりするので、最終的には全部はじき飛ばすというか(笑)。全部“うっちゃる”。何もかも痛快に吹き飛ばすドラマにしたいと思ってます」(古沢)
4月23日(月)放送の「美術商編」のターゲットは美術評論家・城ヶ崎(石黒賢)。ダー子たちはピカソの贋作を持ち込み、城ヶ崎に詐欺を仕掛ける。
難しいことを考えても考えていなくても、とにかく面白く――古沢氏のそんな哲学がにじむ「コンフィデンスマンJP」から目が離せない!
取材・文=magbug
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