江戸川家
――江戸川家のこだわりポイントは?
江戸川家で一番のポイントは大きなソファーです。他の家具や物が差し押さえられている中で、これだけは死守したというもので、このソファーが浮くように部屋を作り上げました。
前シリーズの主人公・つくしちゃんの家は物が多くて飾り込んでいたのですが、新シリーズにおいての音ちゃんに関しては、裕福な時から貧乏になってまだ半年しかたっていないので、その微妙な期間に適切な飾り込みを心掛けました。
半年間の生活の厚みを局所的に密度を上げていきたいと思い、特にキッチン周りは「少ないお金でご飯を食べていかなきゃいけない!」という音ちゃんの、しっかりした部分を出せるように飾りの密度をあげています。
豆苗は紺野さんの家にも置いてあって、紺野さんから教えてもらったという設定になっています。なので、紺野さんのお家のキッチンには家庭菜園の先輩らしくもっと大きい豆苗を置いています。
その微妙な設定を決めた以上、撮影の度に良い感じに育てた豆苗を用意しないといけないのですが、いい塩梅で育てるのが意外と難しいんですよね(笑)。
音ちゃんの部屋は奥にあるんですが、さっぱりさせています。原作と台本を何度も読んでいく中で、裕福な生活から一転して貧乏な生活になった時に、音ちゃんは多感な時期でおしゃれもしたいし、かわいい家具も集めたいけど、家族の中で誰よりもその状況を理解して、私がしっかりしないといけないと覚悟を持っている子だと思いました。今の音ちゃんに過去の裕福だった時の人間性が見えないのはその覚悟があるからだと思います。
最初はそれなりに飾ろうとも思っていたのですが、その解釈に行き着いてから「音ちゃんはそんな事しないだろう…!」って自分に言い聞かせるように引き算していき、かなりシンプルになりました。
あとソファーの横に吊るしてあるティッシュなどは、スタッフ皆が各々実家やおばあちゃん地でやっていた生活の知恵のアイデアを出し合いました。
キッチンの蛇口のボルトのところに輪ゴムとラップを巻いているんですが、それは僕も古い家に住んでいて同じような蛇口で水が漏れてしまっていたので、その漏れを防止するために母がやっていたのを思い出して提案しました。絶対映らないと思うんですけど(笑)。
音ちゃんの逆境に立ち向かう覚悟を持った健気で芯のある女性像を、キッチンの充実度と自室の簡素具合に込めたつもりです。