「何もかも痛快に吹き飛ばすドラマにしたかった」「コンフィデンスマンJP」脚本家・古沢良太ロングインタビュー
執筆前に自らキャラクターの絵を描きイメージを膨らませることでも知られる古沢だが、今回は主人公たちではなく、敵役の絵を描いて臨んだという逸話にも、悪役キャラへのこだわりがにじむ。
「そんなちゃんと描いているわけではなくて、暇なときにスケッチブックに落書きしてるだけなんですけどね。毎回、今回の敵はこんなヤツって絵を描いて、こんなキャラクターでこんなことを言って、こんなシーンがあって…みたいなイメージを膨らませ、発想をいっぱい出す作業ですね。今回は敵の絵の方が多いと思います。結果、全部面白い、いい悪役になったと思いますよ」
ゲストの職業もカジノやリゾート開発、美術商など多岐にわたり、毎回舞台となる業界が変わっていくのも、脚本家には高いハードルだったようだ。
「最初はリサーチ会社の人に頼んで詐欺の手口や例を集めてもらったりもしたんですが、そういうことでもないなと思って。ちゃんとした詐欺の話じゃなくて(笑)、いかに荒唐無稽にするかってことなので、非現実的でもいいやと。それより毎話、ある種の業界モノみたいにしているので、スポーツ界や古代遺跡の作業、美容業界とか美術界のことを調べたりしましたね。その業界で有名な人、お金をすごくもうけている人は誰かなって調べて…大体そういう人って、講演とかしてるんですよね。で、YouTubeに(講演動画が)上がってるんです(笑)。それを延々見る作業でした」
そこまで聞くと、モデルとなった人物が誰か、どうしても勘繰りたくなってしまうもの。そう水を向けると古沢は「勘繰らないでください!(笑)きっと、違います」とサラリ。ともあれ、そうやって各業界のリサーチをし、だます手口を固めていく作業の中で、作品の根幹にも関わるあることに気付いたと語る。
「主人公たちが偽者に成り済ましたり、偽物を作って売ったりというのが基本的なやり口なんですが、それを追求していくとだんだん、じゃあ本物って何かということがテーマになることが多くて。スポーツの本質は何か、本当の医者って何か、家族の本質は、何をもって家族と言うのか。逆に、本物とか真実って何だろうということが毎回テーマになることが多かった気がします。ただ同時に、それでも明確な答えなんかないっていう思いもあったので、最終的には全部はじき飛ばすというか(笑)。全部、うっちゃる。何もかも痛快に吹き飛ばすという感じのドラマにしたいと思っていました」
生きづらい時代を笑い飛ばそう、そんなメッセージを笑いに忍ばせるが、声高にはうたわない。
「僕そんな、自分の言いたいこととか、自分のやりたいテーマを訴えるために作ったりはしていないので。言いたいこととかも特にないですし(笑)。とにかくこの3人や出てくる人達が魅力的で、この人達に毎回会いたいと思って見てもらいたいなと。コメディーに限らずどんな作品にも笑いは必要だし、クスッて笑ってもらいたいなっていうのは基本的にいつもやっていることで。今回は特にお客さんにね、明るく元気な気持ちになってもらいたいなっていうのはありますね。月曜9時ですし。まぁ“月9枠”っていうのは、今の若い人はそんな特定のイメージがないだろうし、メディアの人達だけが気にしてる感じもするけど…あまり大人っぽく難しい話にし過ぎないで、子供も見られたらいいな、と少しは意識しましたね。月曜日なので何か、1週間頑張ろうって元気になれるものがいいなと、ね」