「NHKっぽさの中にNHKらしくないものを忍ばせるのが僕の理想」【「オドモTV」プロデューサー / 河瀬大作】
『プロフェッショナル ―』を通じて、表現や伝え方は無限にあることを学びました
──確かに「オドモのがたり」は、表現としてかなりシュールですよね。
「あそこで描かれる物語は、あくまでも子どもが面白いと思って書いていることなんですよね。でも、子どもが面白いと思ってることって、たぶん大人が見ても面白いんですよ(笑)。ロジックではなく、突発的な、感覚的な面白さというか。そんな子どもが持っている、面白いと思うことに対するアプローチは、すごく大事な気がしていて。
今のテレビ、特に地上波のテレビは、“たくさんの人に見てもらう”というミッションを負わざるを得ないわけで、そうなると、より分かりやすいものにしようと説明過多になりがちじゃないですか。でも、過剰に説明してしまうことで、かえって見る者の想像力やクリエイティビティを削いでしまうこともある。その点、『オドモTV』は、説明を排除することで想像力がより喚起されるという、希有な番組だと思うんです。
番組では、冒頭に『オドモTVは、こどもの発想(アイデア)をおとなが本気で表現する番組です』とテロップが入りますが、実は最初、これすらも説明過多なんじゃないかということで、テロップを入れるか入れないかで、スタッフみんなで激論したんですよ。ただ、これぐらいは説明しておかないと、さすがに番組の主旨が伝わらないんじゃないかということで、それが認知されるまで当面の間は入れよう、ということになったんですけど。
ともあれ、極力“説明をしない”という引き算、いわば、はみ出した番組作りが、『オドモTV』の肝であることは間違いない。いつもスタッフと話しているのは、なるべくロジカルに物事を考えないようにすること、常にユーモアを大切にすること、その二つを心掛けようと。こういう番組があると、われわれ作り手もリミッターが外せるし、視聴者の方々のリテラシーもだんだん高くなっていくのかもしれませんね」
──先ほどおっしゃっていた“真面目にはみ出す”という信条は、何かそういう考えに至るきっかけがあったのでしょうか?
「新しい番組を作って世に問うていくことの面白さを感じたのは、『プロフェッショナル 仕事の流儀』の立ち上げに参加したことが大きかったですね。プロデューサーの有吉(伸人)さんに誘われて、立ち上げから4年ほど携わったんですが、そのころから『プロデューサーっていう仕事も面白いかも』と思えるようになってきて。この番組を通じて、表現とか伝え方は無限にあるんだということを学んだような気がします。
それと、プロデューサーというのは、番組のパッケージ感みたいなものをゼロから作り上げていく作業がすごく面白いんですよね。例えば、『有吉・福くんのお金発見 突撃!カネオくん』(2018年~NHK総合)という番組は、(イメージキャラクターの)カネオくんがかわいくないとダメなんだけど、テーマがお金の話だから、ちょっとギラギラした雰囲気も必要なんじゃないか、とか(笑)。でも、あまりにもギラギラし過ぎて、『もう少しNHKっぽく硬めにした方がいいんじゃない?』なんてディレクターと相談したり(笑)。あの番組は、お金の話を真正面から真剣に取り上げるから成立しているのであって、一つ間違えるとゲスいことになるんですよ。そんな風に、キワキワのところを攻めるというか、ある概念があったとしたら、そのちょっと外側を攻めるような番組が作れたら面白いなと思っているんです」