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「さくら」の著者・西加奈子氏が女心をリアルに描く最新刊をリリース

2010/05/18 11:37

最新刊「炎上する君」を手にする西加奈子氏
最新刊「炎上する君」を手にする西加奈子氏

ロングセラー小説「さくら」('05年)の著者・西加奈子氏の最新短編集「炎上する君」が刊行された。'08年発表作から書き下ろしまでの8編を収録した本作は、何かにつまずきながらも手探りで明日をつかもうとする女性たちが主人公。西氏の感性が光る多彩な各編ではリアルな女心とその変化が描かれ、著者自身が手掛けた装画も強烈な個性を放つ短編集だ。刊行に当たり、西氏に話を聞いた。

――3年ぶりの短編集ですが、執筆のきっかけは?

もともと、短編集にする考えはなくて、最初の作品「太陽の上」は、単発で30枚の短編ということで、何も考えず好きなように書いたんです。主人公が、たまたまちょっと引きこもりの女の子やったっていうのも偶然で。次も単発で書いたのが「舟の街」で、それも偶然、女の人がやっぱり悩んでて。後々考えたら、書きたいことは一緒やったんやなって思ったんですけど、その時は次に次にって書くうち、これはテーマとしてひとつあるかなって。女性性に対して疑問を持っていたり、価値観に縛られていることや自分の存在意義に対しての違和感、そういうことがテーマやなっていうことで、残りの4作はそれを一応念頭に置いて書いたんです。短編集にしたいっていうのは、私からお願いしました。

――短編集のきっかけとなった「太陽の上」はどのように出来上がったんですか?

「太陽」っていう散髪屋さんがあるビルの上に友人が住んでいたんですよ。そのことを友人が人に説明している時、「太陽の上に住んでるんだよ」って言っていて、それってすてきやなって思ったんです。“太陽の上から降りてくる”っていう一文を書こうと思って、そこありきなんですよね。じゃあどういうことで、とういうふうにつなげようかなって思いながら書いて、女の子が、ずうっと太陽の上に引きこもってるいうふうになったんです。

――表題作「炎上する君」はインパクトあるタイトルですね。

「炎上する君」も足が燃えている男の子ありきやねんけど、私のあこがれの女の子2人を登場させました。孤高のスゲー格好いいバンドやってる女の子です。本当に自由に書いたんですけど、(作中の)“恋に戦う君を、誰が笑うことができようか?”という一文は、私は友人には恋愛相談をするけど、例えば恋愛小説ではセックスのシーンをなるべく入れへんようにしたり、素直に好きだっていう言葉を入れなかったり、てらいというか照れがあって。でも、実際の恋愛って、本当に戦いやし、それで価値観がバッーて一変させられることもあるし、照れるなよ、恋に戦っているあんたを誰も笑われへんねんでっていうのを自分自身に言いたくて書いた感じですね。

――各編それぞれ執筆時期が異なりますが、西さんのビートを感じました。

今回、2回目の短編集なんですけど、1作30枚というのは今まで書いた中で1番短くて、極端に言えば1日で書けたりするんですよ。めっちゃはまってる時は。だから本当に瞬発力が1番出たというか。長編もリズムが出ることは出るんですけど、スパンが長いので、どんどん変わっていったりするんです。でも、今回は、本当にその時の気持ちをバッと出した感じがあるので、その時の自分の気持ちが出てます。読み返したら、痛いくらいにいろんな事を思い出すんやろうなっていうのがありますね。

――そして、この装画、線画も西さんの作品ですね。

はい(笑)。装画も書かせてくれって頼んで、帯のコメントもピースの又吉直樹さんにお願いしたりとか、全部本当に自分の好きなように、何も止められへんかったです(笑)。本当に全部好きなようにやらせてもらったんで、めっちゃうれしいです。

――絵は短編全体をイメージされたんですか?

まず、「炎上する君」というタイトルにしたいと話していたので、表紙は炎にしようと思ってたんですけど、でも炎だけじゃなくて、ちょっと不穏でまがまがしくて「何やろ、これ」っていうような絵にしたくて。ネコも顔が見えへんようにしたり、本当に自由に描かせてもらいました。

――今後の活動を教えてください。

刊行はまだ分からないんですけど、「オール讀物」で恋愛小説を書いて、「小説新潮」でも恋愛小説書いたんですよね。恋愛小説を2作書いたんです。そういう時期もあったので、恋愛小説を書くことを恥じるなという意味を込めて、(「炎上する君」は)書いたところもありますね。5月からは、子どもの話を書きたいなって思って考えています。パソコンも買い替えたので、気合入れて書きます。

――最後に、読者にメッセージをお願いします。

とにかく、どんなふうに読んでもらってもいいので、手に取ってもらいたいなって思います。まず表紙を見てもらった段階で、自分の作品なのでうれしいんやけど、やっぱり開いてもらったら、そんな幸せなことはないのです。

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

【プロフィル】
西加奈子(にし・かなこ)'77年、テヘラン生まれ、大阪育ち。'04年「あおい」でデビュー。'08年「通天閣」で織田作之助賞受賞。最新刊「炎上する君」は、「太陽の上」「空を待つ」「甘い果実」「炎上する君」「トロフィーワイフ」「私のお尻」「舟の街」「ある風船の落下」の全8編を収録。


「炎上する君」
発売中 1365円(税込)角川書店

画像一覧
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  • 最新刊「炎上する君」を手にする西加奈子氏
  • 【画像】「炎上する君」の装画は、西氏独自の世界観が表現されている
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