第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されていた是枝裕和監督の映画「万引き家族」(6月8日公開)が現地時間19日、最高賞のパルムドール賞を受賞した。日本人の同賞受賞は今村昌平監督「うなぎ」(1997年)以来21年ぶり。是枝監督にとってはカンヌ国際映画祭への出品7回目、コンペティション部門へ5回目の参加での快挙となった。
「万引き家族」は、都会の片隅に取り残されるように建つ平屋を舞台に描かれる、とある“家族”の物語。家の主・初枝(樹木希林)と、初枝の年金を目当てに転がり込んだ治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)夫婦。そして、その息子・祥太(城桧吏=じょう・かいり)、信代の妹・亜紀(松岡茉優)。治たち一家は、足りない生活費を万引きで稼いでいる。衝撃的なタイトルは、そんな社会からはみ出した家族のありかたを表している。
そこに、治が見かねて連れ帰ってきた体じゅう傷だらけの幼い少女(佐々木みゆ)も加わって、一つの集合体を形成していく。普通の家族とは違う、だがそこには家族にしかない絆が確かに育っていく。
公式上映後の記者会見で、是枝監督は「日本の社会と家族というものの摩擦する面をきちんと描いてみようかなと思ったんですよね。あくまで社会を描こうと思ったというよりは家族を描こうと思っていた」
「ある種の豊かなつながりがあの家族にはあって、僕たちが感じない色や光があって。その家族の姿を描くことで、逆にこちら側の僕らの家族とか共同体ってものが逆に照らされる。そんな存在としてあの家族を描きたい」と、作品の意図を語った。
あえて社会規範の物差しからは逸脱した一家を描くことで、“家族”の本質をあぶり出していく――犯罪者一家を主人公に据えるという危うさを内包しながらも、世界でもっとも権威のある映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭で高く評価された。公式上映ではスタンディングオベーションが約9分にわたり、是枝監督だけでなく、ポーカーフェースのリリー・フランキーさえも感動で目頭を熱くしたという。
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