2018/06/02 14:00 配信
そう、本作の魅力のひとつが、奈津を始めとする出演者陣がまさに体当たりで演じる、濡れ場のシーンだ。タイプや年齢の違った男性たちが、それぞれのやり方でもって、奈津を愉悦の淵へと追い詰める。対して奈津演じる水川は、性に溺れそうになりながらも、なんとか乗りこなそうともがく姿を、繊細に体現する。内に怒りを秘めた妻の顔や、長年の憧れだった志澤と初めてベッドインする時の戸惑いと恐れ、そして悦びの入り混じった複雑な横顔。様々な逢瀬をくりかえすうちに身に着けた、したたかな男を誘う上目遣い。回を追うごとに凄みと艶やかさを増していく水川の姿はまさに官能的だ。
こうして、志澤と肉体関係を結んだ奈津は、情動に駆られるがまま、これまでの生活を捨てることを決意し、夫と暮らす家を出る。ところが一転して、志澤は突然態度を変え、冷たくあたってくる。奈津の、新たな依存先となるのをきっぱりと拒否するのだ。その態度に傷ついていた奈津は、ひょんなきっかけで再会した、大学時代の元恋人である新聞記者の岩井(田中圭)と、自らの心を慰めるために、“友情のエッチ”をする。しかし、月日はかつての恋人を大人の男に変えていた。
「なっちゃん、脚を大きく開いて。余計なこと考えなくていいから。お互い初めてじゃないんだからさ、なっちゃんの恥ずかしいところ、全部見せて、全部」。
昔馴染みだからこその気安さと懐かしさに、ささくれだった心が癒されるばかりか、さらにいい男へと成長を遂げていることを目の当たりにして、奈津の恋心は再燃する。しかし、ひとつだけ問題があった。岩井は、既婚者だったのだ。
どうやっても、自分のものにはならない男と、身体を重ねれば重ねるほど、虚しさは募り、優しくされれば優しくされるほど、寂しさが増していく。そんな自分を持て余して、半ば自棄になって行きずりの男たちと次々と関係を重ねていく奈津。その中のひとりが、新進俳優・大林(栁俊太郎)だ。志澤や岩井と違い、面倒なしがらみもなく素直でまっすぐ。かすかに残っている少年の面影と、しなやかで綺麗な肉体。いわゆる「年下クン」の魅力に溢れた大林だが、ベッドシーンでは、その可愛さは息をひそめてぐっと、大人の魅力を見せてくれる。
一途に奈津に心を寄せる大林。けれどもすでに奈津は、変貌を遂げてしまっていた。自らの性欲を認め、欲求のまま生きるようになったことで、男たちが支配下における女ではなくなっていたのだ。そして迎えるラスト、奈津は男たちと、そして自らの欲望と、どう決着をつけるのか――性を解放することで、女は何を失くし、何を得るのか。そのひとつの答えが、ここにあった。
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