――伊藤さん自身が大切にしている言葉はありますか?
「(3年B組)金八先生」(TBS系)のセリフなんですけど「あなたに優しくできたから、優しい私になりました。私を作るのはあなたです」という言葉が忘れられないんです。
誰かに何かをもらったりあげたりして、誰かが出来上がる。そして、同じように私も出来上がる。そういう無意識の連携プレーみたいなものが好き。千秋が自分から動き出したのも、ヨーコさんからもらった普通のおまんじゅうがきっかけ。
そこから、いろいろなものが積み重なっていって、ある決断をする。結局、一人では何もできないですから、やっぱり人の支えって大切ですよね。お母さんにも「みこしは一人じゃ担げない」って、よく言われています。
――子役として芸能界デビューしてから15年。演じるということに対して変わったと感じる部分はありますか?
自分がいるべき場所、役割などを自分で考えるようになりました。子役の頃は、言われたことをやっていた感じ。「そこで止まって、あっちを向いて泣いてください」と言われることに対して、特に細かいことを求めませんでした。
天才子役さんは違うかもしれませんけど(笑)、私にはどうしてそうなるのか、そう思うのかという「何で?」という疑問がなかったような気がします。でも、大人になった今は、どんどん面倒くさくなっていますよ(笑)。
もちろん、全部のことに疑問を抱いていたら何も始まらないから自分なりに納得させるところはありますけど、腑に落ちないままだと、椅子から立つという演技ができなかったりして。
頭の中に“?”を浮かべたままお芝居しちゃいけないなって思うようになりました。例えば怒るシーンでも「ここまでされたら、この人も怒るよな」って、一つ一つしっかりと考えるようになったのかもしれません。
だから、監督に妥協されてOKを出されるのが怖いんです。自分自身が妥協したら、そのまま妥協されてしまうんじゃないかって思ってしまう。そういう意味では、少しずつかもしれませんけど責任感が芽生えてきたんですかね(笑)。
――シリアスからコメディーまで幅広いジャンルの作品に出演していますけど、特にコメディエンヌ的役割を求められることが多いですよね。
コメディーは、やればやるほど分からなくなってきます。人それぞれ、面白いと思うことは違いますし、笑いのタイプもたくさんある。
セリフ一つ取ってみても、意外とどうでもいい言葉は大声で言った方が面白いし、ボソっと言った方がウケる場合もある。
面白くやろうと思っても私には無理なので、コミカルなシーンはなるべくお家で練習しないようにしています。セリフだけしっかりと覚えて、あとは現場で演じながら考えようと。
ガチガチに決め込んでしまうと、監督から言われたことに対応できなくなりますし、相手のお芝居によって変わってきますから。常にフラットな状態でいられたらいいなと思っています。
――では、最後にメッセージをお願いします。
「榎田貿易堂」は、この人たちと働きたいなとか、あの輪の中に入ってみたいなと思えるようなキャラクターがたくさん出てきます。
今、何かに悩んで立ち止まっている人、ちょっと進み始めた人、しっかりと進んで頑張っている人、みんなに響く作品。
決して重い話が続くような映画ではないので、何となくフラっと映画館に入って、気軽に楽しんで見ていただけたらうれしいです。
取材・文=月山武桜
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