――脚本に取り掛かるまでのプロセスに、半年もかかるんですね。
原作者の森村誠一先生との信頼関係があるからこそできることなのですが、原作から何をすくい取って、どんなドラマを構築するかという作業が、僕らにとっては最も大事な仕事であり、ドラマの“命”だと思っているんです。
テーマというとおこがましいのですが、その作品の“土台”や“根っこ”となるものを、とにかくつかまえなくてはなりません。それは原作を選んだ段階でストンと決まるときもありますが、ストーリーを構築していく中でどんどん深められていく場合もある。そうするとストーリー自体が変わってきたりして、その作業そのものがドラマのようなものです。大事にするのは“牛尾目線”で、皆さんの心に温もりを残すような作品にしたい!
――脚本執筆に入った後、脚本家さんとはどのようなやりとりをされるんですか?
「終着駅シリーズ」では、ベテランの脚本家さんたちにシナリオをお願いすることが多いのですが、熟練の皆さんでも第3稿、第4稿と手直しをしていただきますね。
僕らプロデューサーでもせりふの“てにをは”を変えるだけで一晩悩んだりするので、言葉を生み出すことの呻吟(しんぎん)といいますか、せりふを生みだす作業がものすごく大変なことも分かっているつもり。だから、乱暴に変えたり、やみくもにカットしたりはしません。お互いにリスペクトし合いながら練っていきます。
――最も大事にしているのはどんなところですか?
牛尾の目線、つまり牛尾が捜査上でどんなことに引っ掛かるのか、最後に犯人に何を語り掛けるのかを一番大事にしています。
また通常なら捜査線とは別に、ゲスト側のドラマをパラレルで描いたりしますよね。捜査とは別に、視聴者にはゲスト側の情報が入るので、それは展開としてとても面白いんです。でも「終着駅シリーズ」では基本的に牛尾の目線で描いていくので、そこは大きく違う。
牛尾の目線が視聴者の皆さんの目線になっている、ということですね。もはや定番になっているかもしれませんが、捜査会議で徳井優さん演じる山路刑事と対立して窮地に追いやられたり、秋野太作さん扮(ふん)する坂本課長に頭を下げて単独で捜査に行ったり。そんなふうに牛尾が困ったり、行き詰まったりした時、どう打開するかを皆さんと共有したいんです。
「あぁ、牛尾刑事また失敗しちゃったな」とか「ついに海岸に立っちゃったよ」って牛尾刑事と一緒に皆さんがドキドキワクワクしていただけたらいいなと思っています。
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