光が差したような感覚があったんではないでしょうか
――国父になった後の久光は、見た目も性格もかなり変わったように見えました。演技をする上でも違いを意識した部分はあったんでしょうか?
「国父」というキーワードを得て、光が差したような感覚があったんではないでしょうか。その言葉を得たことで、「薩摩は自分が全て指揮をしていく」という意識も強くなったと思います。
見た目としては、恰幅が良く見えるようにしていたり、メイクや小物、声の出し方なども変えているので、以前とはガラリと変わったような印象になっているかなと思います。
慶喜とのシーンは「バチバチのやりとり」
――慶喜(松田翔太)と初めて対面するシーンも印象的だったように感じます。撮影はいかがでしたか?
演じていてすごい面白かったです。慶喜を演じている松田くんは間の撮り方が独特でした。久光が自信満々で「これから対等にやっていきましょう」という感じで慶喜と対しているのに、慶喜にとって久光は「どこぞの田舎侍がやってきたぞ」くらいのものでしかないんですよね。
二人のシーンは、ものすごい豪華な着物を着た同士がやり合っていて、アクションシーンのような迫力になっていたと思いますよ。
もちろん演技はしているんですけど、それと同時にトップ同士がすごいやりとりしている、あの場と空気感を作っていることに、なんだか興奮しました。
いろんなものを背負っている人々の冷静さをかいたバチバチのやりとりになったと思います。
史実では慶喜が久光に「天下の愚物」と言ったそうなんですが、日本の中枢を担っている人たちがそんな言い合いをしていたなんて、熱くて面白いですよね。
僕は行くところ行くところでけんかばっかりしてるんで、ちょっと疲れました(笑)。
――誰からも好かれる吉之助の“生涯の敵”と呼ばれている久光ですが、吉之助とのシーンの撮影はどんな雰囲気だったんでしょうか?
吉之助と対するシーンでは、吉之助のことをどこか亮平くんとして見てしまって、憎むんですけど憎み切れないんです。
憎むための源泉が枯渇していて、「こりゃあいかんな」と思いました。だから、「カツラがかゆい!」とか「正座が辛い!」っていう気持ちを「全部お前のせいじゃ!」と吉之助にぶつけるようにしてます(笑)。久光は、誰からも好かれる吉之助を好きにならなかった人物ですからね。
歴史の人物を描く漫画の中で、久光って大体悪い顔で描かれているんですよ。でも、僕はそういう人を演じるのが大好物で、悪い人物のように思われているからこそ、視聴者が憎めなくなるような部分を見せたいと考えるんです。
久光は、悪く見られる立場にある人だと思うんです。でも、劇中ではちょっと残念な人に見られるかもしれませんが、キャラクターが立つような、見ている人の心に残るようなシーン作っていきたいと思いますね。
――序盤では、視聴者から「久光かわいい!」という声も挙がっていましたね。これからはそんなかわいらしい姿が少なくなってしまうんでしょうか?
最初のころは「ひさみちゅ」って呼ばれてましたからね(笑)。でもかわいらしさは、今後より増していくんじゃないでしょうか?
久光は、親の愛情をたっぷり受けて育ってきて、自信満々の人なんですよ。だから、足元を払われて泣いたり、自分の安心できる家臣を溺愛したり、すごい分かりやすい人間的な弱さを持っている人なんですよね。
人間味あふれる人なので、ちゃんと威厳は保ちつつ、そういう弱い部分も見せていきたいと思います。