――では、この作品の脚本を読まれたときの感想を教えてください。
くんちゃんの目線で描かれる物語なので、4歳の男の子から見た世界じゃないですか。しかも、妹のミライちゃんが生まれたばかりで、普通に考えたらとても慌ただしい日常だと思うんですけど、すごくゆっくりと時間が流れていて、そこから細田さんらしいSF的な世界に行くとはいえ、ベースは家族の日常の物語なんですよね。すごく心を揺さぶられたし、私は最後に号泣だったんですけど、なんでこういう話が描けるんだろうなとあらためて思いました。
――最後には号泣されたんですね。
私はくんちゃんの家族とイヌも含めて家族構成が同じなので、イヌのゆっこが出てきたときに、細田さんはイヌの気持ちまで描いてくれるのかと(笑)。くんちゃん家と同じで、私も一番最初に家に来てくれたのがイヌで、彼女を長女だとは思っているんですけど、小さい子供がいるとなかなか一番にかまってあげることができなくて。だから、ゆっこのセリフがものすごく心に突き刺さるし、本当に分かることだらけだったので、ずっと共感していました。
――くんちゃんのお母さんは、くんちゃんの妹・ミライちゃんを出産後、キャリア復帰する女性でもあります。その部分での共感はありますか?
ありますね。私自身、子供が生まれてからも仕事を続けさせていただいていますし、私の母も働いていたので、共通する部分があると思います。うちの母親は私と弟を育てるために本当に朝から晩まで働いていたので、子供としては寂しい思いもしましたし、仕事に行く母親に「行かないで!」と泣いたこともあります。もちろん、今となっては、それも私たち子供のためと分かるんですけど、当時は本当に寂しかったですね。
それが今、自分が母親になって、娘から同じことを言われたり、実際に寂しそうにしているのを見ると、母親として心苦しくなります。でも、この映画の中で、私が演じるおかあさんが自分のお母さん(くんちゃんの祖母:ばあば)に「(子供たちの幸せを願って)ベストを尽くそうと思ってる」と言うと、ばあばが「子育てには願いが大事だよ」と言ってくれるシーンがあるんですよね。私自身、そのセリフに大きく救われるところがあったので、子育て中のお母さんや働きに出ているお母さんにもぜひ見てほしいです。
映画「未来のミライ」
公開中
配給=東宝
監督・脚本・原作=細田守/声の出演=上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子ほか