――イエスやムーディー・ブルースなど70年代ロックの名曲も多く出てきますね。曲をサブスクリプションで探して聴きながら読んでみるのも楽しかったです。
なるほど、それはいい読み方ですね(笑)。立体的に楽しめるというか。今の時代はネットに音源があふれていますからね。小説に書いている音楽は何度も聴いてきたものばかりだし、アナログレコードでもCDでも持っていますよ。
海外のアーティストはそのジャケットだけでも、もうアート作品になっていますよね。70年代だけではなくて、80年代、90年代の音楽ももちろん聴いてきましたけど、やっぱり生で見た、70年代のレッド・ツェッペリンやピンク・フロイドの来日公演の体験は忘れられない。いまだに一曲目のこととか明確に思い出せますよ。
――連載中や書籍になった時の周囲の反響などはいかがでしたか?
意外だったのはメンバーの二人(桜井賢、坂崎幸之助)の反応ですね。小説の連載を始めたときに「小説書いたんだぜ」って言ったら「あ、そうなんだ」ってあんまり驚かなかったんです。もっとビックリしてくれると思っていたのに「お前、ずっとギターケースの中に本が入っていたしな」「いつか書くと思っていたので驚きはない」って。
確かに、ギターの替え弦は入っていないくせに本はいつも入ってる、みたいなことはありましたからね(笑)。感想? 多分読んでないんじゃないかな?(笑) いつかは聞こうと思っていますけど、あまりにも近いから恥ずかしい。二人とも普段から本読まないけど、僕の本くらいは読んでほしいな。
――うれしかった周囲の感想はありましたか?
当時を知っている高校時代からの友達から「読んだ、面白かった」とメールをもらったのはうれしかったです。「あそこは違うんじゃないの?」という指摘もありましたが(笑)。あとはファンの方からの、最初は僕を投影していたけど、読んでいくうちに、僕の存在は関係なく物語に集中できたという意見。45年やってきたという事実は大きいので、僕を投影されても仕方がないと思っていましたから、そういう声が多いのはうれしいですね。
――あれは自分がモデル?というような、知人の反響はありましたか?
この間、たまたまデビュー当時のディレクターの方にお会いしたら、「瀬川です」(主人公のバンドを担当するレコード会社のディレクターの名前)って言われました。「高見沢くんは、あんなに悩んでいたのか…」って(笑)。「違う、違う! あんなに意地悪じゃなかったですよ! それに雅彦は僕じゃないですから!」って一生懸命説明して…面白かったですね。
――小説が出たばかりですが、3年ぶりのソロシングル「薔薇と月と太陽~The Legend of Versailles」もリリースされました。小説と歌詞では書き方にどんな違いがありますか?
今回の新曲「薔薇と月と太陽」は小説を書き上げた後に完成させたんですが、今、歌詞を書くことをすごく新鮮に感じています。
単に文字数の違いもありますけど、歌詞というのはメロディーと一体となって一つの作品になるので、説明不足な点があっても成立する。小説は、説明しなきゃダメな部分と説明し過ぎちゃダメな部分とのせめぎあいが非常にシビれるところ。
両方経験してみると、歌詞を書くことに苦手な部分もありましたが、今は曲を作るより歌詞を書く方が早いかもしれない。「薔薇と月と太陽」は、曲と歌詞がほとんど同時にできたようなものですから。とにかく、歌詞を書く感覚が変わったということは大きい変化ですね。
これまで自分にはできないと思っていた小説が書けたことで、今まで45年間やってきたものが逆に新鮮に見えたのかもしれません。
――小説「音叉」とは全く違って、貴族の禁断の恋がテーマになっています。
ヴェルサイユ宮殿を舞台にした貴族の禁断の恋を、時空を超えて現代の恋にリンクさせて描いているんです。ルイ14世時代の貴族の世界では、結婚するまで恋愛の自由はなかったそうなんです。でも結婚したら恋愛は自由だから、毎日のように舞踏会が開かれるわけですよ。いってみれば禁断の関係。今なら炎上系ですよね(笑)。
それにしても不倫はいけないものだと分かっているのに、なんでみんなそんなに不倫するの? 禁断といえば子どもの頃、「俊彦、このギターに絶対に触るなよ」って兄貴に言われたのにいない時にこっそり触ってしまって。手あかがベッタリ付いているからバレちゃって…っていう経験があります(笑)。
そういう、いけないことをやってしまう人の思いにも興味がありますね。次は不倫小説? 違う違う! 想像の中で書いてみたいです(笑)。
――作家という肩書きが加わって、今後のTHE ALFEE、ソロアーティスト・Takamiyとしての活動にも期待しています。
昔はレコード屋さんに行ってレコードを買って音楽を聴いていたけれど、今はネット上で手軽に聴ける。ただ、バーチャルリアリティーが蔓延してきた中でも、リアルなコンサートは変わらずに残っている。皆さんがチケットを買って来てくれて、僕らはその場所に行って演奏して…僕らはずーっと45年間休みなくやってきたバンドですから、
その現象は面白いなと感じます。今回、曲を作る、コンサートをする、そして小説を書くということの相乗効果がうまくいったんですが、もう打ち止めにしたいですね。これ以上活動の場を広げると寝る時間なくなっちゃうから(笑)。
音楽はいろんな人の手を煩わせないとできないこともあるけど、小説は自分の中だけでいろんなことができる。この年になってこんな面白い表現方法があることに気付いたので、今後も大事にしたいと思います。
インタビュー・文/草野美穂子
【通常版】 四六版上製
7月13日発売 本体価格:1700円(税別)
【愛蔵版】 四六版上製函入り スペシャルブックレット(髙見澤俊彦ロングインタビュー、撮り下ろし写真など収録)付き
7月25日発売 本体価格:7200円(税別)※数量限定生産
※8月18日(土)、東京都内でサイン会開催予定。「音叉」帯についている応募券が必要。抽選で200名様を招待。応募締切は年8月3日(金)消印有効
■Takamiyニューシングル
「薔薇と月と太陽~The Legend of Versailles」
M-1 薔薇と月と太陽~The Legend of Versailles
M-2 恋愛 Gigolo
【初回限定盤 A 】価格:1,188円(税込)
M-3 霧に消えたロゼレア
【初回限定盤 B 】価格:1,188円(税込)
M-3 哀愁トゥナイト
【初回限定盤 C 】 価格:1,188円(税込)
M-3 太陽はもう輝かない
【通常盤】 価格:1,080円(税込)
M-3 薔薇と月と太陽~The Legend of Versailles(Original Instrumental)
いずれも2018年7月25日発売
■Takamiy ソロライブ
「Takamiy 2018 Metal of Renaissance」
2018年9月1日(土) 開場17:00/開演18:00
2018年9月2日(日) 開場16:00/開演17:00
会場:神奈川県・パシフィコ横浜国立大ホール