産婦人科の“影”描くドラマ「透明なゆりかご」、院長役の瀬戸康史が感じた「知らないことの怖さ」〈前編〉

2018/08/15 07:00 配信

ドラマ インタビュー

【写真を見る】劇中より、真剣な表情を見せる白衣の瀬戸康史(C)NHK


患者さんの悲痛な叫びに胸がきゅっとなる


――瀬戸さんが演じられる由比は原作にはあまり登場せず、ほぼオリジナルのキャラクターですよね。瀬戸さんは由比を、どんな医師だと感じていますか?

とても真摯な人だと思います。お医者さんですけど患者さんと同じ目線で物事を話す、そんな印象ですね。

人に対して冷たくできないところがあるというか。だから余計に、患者さんの苦しみを背負っちゃう一面もある。

――第5話では看護師長の榊(原田美枝子)から、「妊婦一人ひとりを最後まで面倒見ているときりがない」と言われる場面もあります。

由比先生は家族の生活も見守るべきじゃないのかという考えを持つ一方で、それでは仕事として成り立たないってことも分かってると思うんですよ。

そこは役者の仕事と似てるんです。僕らも好きなことを仕事にしていて、仕事と思ってない部分もあることにはある。だから、どこまでを仕事とするのか、そのはざまでいつも戦ってるんじゃないですかね。僕らもそうですし。

でも、変に優しくなり過ぎて、あまり期待を持たせないようにも意識しています。優しい先生とはいえ、それだけではだめだと思うので。

そして患者さんの目を見て話すことは大事にしています。目をしっかり見て、言わなければならないことをちゃんと伝える。

――厳しさも併せ持っていないといけない。

そうだと思いますよ、産科医は特に。今でこそ医療の進歩で助かる命が増えたとはいえ、この作品は20年近く前の話だったりするので、厳しい現実と向き合う場面は、今よりも多かったんじゃないかな。

劇中より、由比(瀬戸康史・写真右)はアオイ(清原果耶・写真左)らとさまざまな患者に向き合う(C)NHK


――手術のシーンもありますが、どういったところが難しかったですか。

本当に何も知らないので、一からですよね。特に中絶手術とかはネットで調べても出てこないですし。

全て先生に聞いて教わるしかなかったんですけど、同じような器具が幾つもあって、このタイミングでこれを取るとか。手術の段取りを覚えるのは本当に大変でした。

特に撮影初日がアウス(人工妊娠中絶)のシーンだったんですよ。そのシーンを通して感じたことは、アオイちゃんのせりふでもありましたが、ほんの数分が何時間にも感じられるような感覚になりました。

――お芝居とはいえ、中絶などのシーンは苦しいのではないでしょうか。

そうですね、今回の作品は毎話そういうシビアなシーンがありますし。患者さんの悲痛な顔や叫びみたいなものを感じて、胸がきゅっとなることは毎度ありますね。

産科医の人たちはそういう思いを一つ一つ受け止めて、乗り越えてやってるんだなと思うと、本当にすごい世界なんだなと思います。

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