
受けるお芝居が難しいなと思っています
――アオイを演じる上で、演出の方とよく話し合いをされるそうですね。印象的だった言葉などはありましたか?
第1話から第4話までを演出してくださった柴田(岳志)さんが、「感じたまま、素直にお芝居してくれればいいから」ということを私に言ってくださったんです。
その言葉をかけていただいた時は、私がどのようにアオイをどう演じればいいのか悩んでいるときだったので、そこからはいい意味で開き直って演技をすることができるようになりました。
――悩むことも多かったんでしょうか?
アオイは誰かに気持ちを伝えるということが多いんですが、それと同じくらい、周りにいる人たちからアオイが教わることや感じることも多いので、受けるお芝居が難しいなと思っています。
誰かに何かを伝えるためには、言葉にしたり行動を起こすことができるんですが、受けるお芝居ではその人との関係性を、話を聞いている表情などで表現しないといけないんですよね。
その難しさは、この現場ですごく感じています。
特にアオイは、1つの話の中で顔の寄りになるシーンが多いんです。いつも表情筋がピクピクしちゃいます(笑)。
――表情のバリエーションも意識されているんですか?
始めは、「つまんなかったら嫌だな」っていうことを考えたりもしていました。でも、今はそんなことを考えていた自分に「気にしなくていいんだよ」と言いたいです。
それくらい、私が感じたことをナチュラルに出そうと思って努力しています。
大げさに表現し過ぎると、このドラマで描いているような深い題材には寄り添えないし、共感もできないと思うんです。
だから、視聴者の方々もアオイと同じ視点でも見られるような、表情やお芝居をできたらいいなと思っています。
――演出の方から言われたことが生きているんですね。
そうですね。
アオイという役を演じることに慣れてはいけないなと思っているんです。
私は、役は演じていく中で自然と固まっていくものだと考えていたんです。でも、アオイは演じることに慣れてしまうと現実味がなくなったり、共感できない人物になってしまう気がしています。
――アオイの人間性が現れているシーンはどこだと思いますか?
第2話から登場している町田真知子(マイコ)さんという妊婦さんがいて、いつも医院にサーターアンダギーを持ってきてくれるので、看護師や先生みんなで食べていたんですね。
そんな真知子さんが、第4話で亡くなってしまうんです。
編集の都合上、放送されていない部分なんですが、その後に、アオイは真知子さんが持ってきてくれたサーターアンダギーを「食べなきゃ」って一人でもぐもぐ食べるんです。
なかなか亡くなった方の持ってきてくれたものを「食べなきゃ」と考えて、一人で行動に移すってできないことだと思うんです。
そのシーンを撮ったときに、アオイちゃんはすごく人間として魅力的だなと感じましたし、そういうことができるアオイちゃんを尊敬しました。

――8月10日に放送された第4話(8月14日[火]夜1:30から再放送)では、妊婦の真知子が出産直後に様態が急変して亡くなるという、アオイや「由比産婦人科」の方々に大きな影を落とすシーンが描かれました。撮影はどのような雰囲気だったんでしょうか?
そのシーンは、キャストの皆さんと「本当に辛い」「さみしい」と言いながら撮影しました。真知子さんはアオイにとっては女神のような存在で、すごく影響を与えているキャラクターなんです。
そういう方が、由比産婦人科で亡くなってしまったということに、アオイも由比先生も旦那さんの陽介(葉山奨之)さんもすごく感情が揺さぶられていました。
でも陽介さんを救ってくれる人もいて、みんなが「だけど前を向いていかないといけない」と思っていることが描かれている回になったと思います。
――最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。
産婦人科と聞くと、女性がメインの物語だと思う人が多いと思います。
でも、男性の方も、私と同世代の子たちも、みんなに関わることなんです。
今まであまり触れる機会がなかった方には、知らない世界かもしれませんが、このドラマを見てもらえれば、何か感情が芽生えたり、感性を広げられるような気がしています。
そして、妊婦さんや赤ちゃんを産むことを迷っている方たちの気持ちは、今の私には100%の理解をすることができないと思います。ただ、そういった方々をこのドラマで支えることができればとも思っています。
毎週金曜夜10:00-10:45
NHK総合で放送
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