乃木坂46、大規模かつシンプルなライブだからこそ見えたその実力
今回のツアーでは、最新シングルのタイトルにちなみ「ジコチューコーナー」というブロックが用意されている。各メンバーが、歌いたい曲を思い通りの演出で披露するという企画だ。ストレートに歌とパフォーマンスを見せるだけではなく、コント調の演出で笑いを誘うメンバーもおり、それぞれの個性が大いに発揮され好評を博している。
そんな中、大阪公演の2日目に披露された松村沙友理プロデュースの「命の真実 ミュージカル『林檎売りと白米』」は替え歌だった。オリジナル曲はメンバーの生田絵梨花とミュージカル俳優の坂元健児がデュエットした「―『林檎売りとカメムシ』」。15thシングル「裸足でSummer」のカップリング曲だ。いかにグループ単独でのライブといえども、新規のファンも多い乃木坂46だけにカップリング曲を替え歌にするというのはなかなかのチャレンジだったと思うが、客席は大いに沸いた。あれだけ大きな会場でありながら、笑いどころやファン心理をくすぐるポイントでしっかりとリアクションが起こったのだ。このあたりは乃木坂46の現在の愛されぶりが垣間見えた場面だと言えよう。替え歌は、元ネタが十分に認知されていなければパロディーとして成立しないからだ。
ことしの全国ツアーは、7月6日、7日に東京・明治神宮野球場と秩父宮ラグビー場の2会場をメンバーが行き来しながら行われた“シンクロニシティ・ライブ”としてスタート。史上初の「同一アーティストによる2会場同時でのライブ開催」として話題になった。そのトリッキーな演出と比べると、ヤンマースタジアム長居での大阪公演はごく普通だったかもしれない。しかし、シンプルだからこそグループの底力が見えるライブになった。
大阪公演の2日目を締めくくるMCで、キャプテンの桜井玲香が「こんなに広い会場でできるなんて…。3年ぐらい前だと、(客席が)埋まらなかったりっていう悔しい思いをしたのが大阪だったので『うれしいな~』って心の底から思います!」と率直な思いを口にした。全会場がスタジアム&ドームという大規模ツアーは、この後、愛知、宮城と続くため大阪公演が折り返しとなるが、グループの真骨頂はまだその先にあるのかもしれない。アイドルグループの取材を続けていると、どうしても「今がピークなのでは?」と考えてしまう瞬間がある。その疑心を何度も乗り越えさせてくれる力が、乃木坂46にはある。
取材・文=大小田真
発売中
NEWシングル「ジコチューで行こう!」
ソニー・ミュージックレコーズ
1650円ほか