名前の通り “たおやかさ”を持った、みんなのミューズ
土屋太鳳を嫌いな人なんてこの世にいるのだろうか。
そんなふうに錯覚してしまうほど、彼女を「いい子」と絶賛する声がやまない。
特にお笑い芸人からの人気は絶大だ。たとえば、バナナマン日村勇紀は、朝ドラ「まれ」(2015年NHK総合ほか)でその魅力の虜になったひとり。以来、「素敵な文章」だと称賛する土屋のブログ「たおのSparkling day」を読むことが日々の楽しみだと語っている。現在はInstagramと連動した形だが、もともとは芸能人ブログとは一線を画した長文で丁寧な文章が特徴的なブログだ。もちろん、あの「オールスター感謝祭」(TBS系)の激走にも心を打たれ、相方の設楽統と共に「土屋太鳳の大会だったと言っても過言ではない」「過言じゃない、“土屋太鳳感謝祭”ですよ」と言い合っていた(「バナナムーン GOLD」2016年10/14)。
それは2016年10月の改編期に放送された「TBSオールスター感謝祭」。そこに「IQ246〜華麗なる事件簿〜」(TBS系)のヒロインとして出演していた土屋は、持ち前の運動神経で番組名物の「赤坂5丁目ミニマラソン」の出場に名乗りを挙げたのだ。しかし、女優である。森脇健児を筆頭にこのミニマラソンに向けて調整しているアスリート色の強い男性芸能人が多数出演している名物企画。大方の視聴者は、出場するだけでも偉い、くらいの見方だっただろう。スタートからしばらくはハンデなどで上位を走って目立てばいい。あとはゆっくり走って完走する。それだけでも十分だと。けれど、それがいかに浅はかで無礼な考えだったかが、彼女の走りで思い知らされる。
ハンデをもらったとはいえ、全4周のうち3周までトップを激走。鋭い目で必死に走る姿に、見守る共演者たちが涙を浮かべるほど。最終的には8位(女性の中では1位)でゴールテープを切ると、立ち上がれないほど全力を出し切っていた。それでも椅子を差し出されても「先輩方が立っているので」と一度は断る体育会気質も見せた。感想を聞かれると「このマラソンをつくってくださった方、すごいなって思います…」と息も絶え絶えに語り、そのまま続ける。
「キツくて、でも……『IQ246〜華麗なる事件簿〜』、素敵なドラマになってます。本気で見ていただきたいです」
司会の今田耕司をして「こんな命懸けの番宣あります!?」と驚嘆していた。「本気で見ていただきたい」という思いがこれほど伝わる番宣はなかなかない。これをテレビで見ていたナインティナインの岡村隆史も「俺、一発でファンになった! あの子はねぇ…めっちゃええ子!」「あの子は芸能界みたいなところに入ってきたらいけない子、あんな頑張り屋さんいないよ!」と手放しで称賛した(「岡村隆史のオールナイトニッポン」2016年10/13)。
◆てれびのスキマ◆1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌「週刊文春」「週刊SPA!」「TV Bros.」やWEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載多数。著書に『1989年のテレビっ子』『タモリ学』『笑福亭鶴瓶論』『コントに捧げた内村光良の怒り』など。新著に『全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方』