1970年代にシンガー・ソングライターとしてデビュー。「きみの朝」「重いつばさ」などの大ヒット曲を放った岸田敏志が、9月末より「懐かしい風景」と題する2018年のコンサートツアーを開催する。
歌手活動と並行して、ドラマ「1年B組新八先生」「渡る世間は鬼ばかり」(共にTBS系)やミュージカル「ミス・サイゴン」「屋根の上のヴァイオリン弾き」で演技者としても活躍。舞台音楽も手掛けるなど、数々の挑戦を繰り広げてきた岸田。
上記タイトルを冠して2018年に開催するツアーにはどのような思いを胸に挑むのか。
10月末の東京公演に参加する岸田の息子で作曲家・編曲家・パーカッション奏者の稲田しんたろう、娘でミュージカル女優・歌手の稲田みづ紀とともに話を聞いた。
――9月からスタートするツアーはどのような形になりますか?
岸田:これまでツアーはバンドだったり、弾き語りだったり、親子3人だったり、いろいろな形でやってきました。おととしの40周年の展開が終わり、それからはギター一本の弾き語りと、3人の編成でしばらくやって。今回のツアーは弾き語り中心で、東京だけ家族ともう少しミュージシャンを入れる形になります。
――東京以外はお一人で?
岸田:はい、もうギター一本でやります。
――セットリスト(楽曲)はもう固まっているんですか?
岸田:全部ではないけれど、これは絶対今回歌おうという曲は決まっています。
――演奏曲目を詳しくうかがうのは控えておきます。
岸田:ははは。ネタばらしになるからね(笑)。
――はい。会場で楽しみにしています。では、今回のツアータイトル「懐かしい風景」に込めた思いについて聞かせてください。
岸田:40周年が終わって、いろいろ考えることがあって。還暦も過ぎ、ファンの皆さんもセカンドライフの時代になっていく。フォークからニューミュージックの時代になっていった頃に、我々がやっていた音楽がこの日本で認められ、聴いてもらえるようになった。そういう時代が一段落ついて今を迎えてるわけですよね。
例えば、部屋の片付けとかをしている中で、そこに見つけた箱を開けて眺めていると、いろいろなことを思い出します。写真とか資料があれば、あの時この歌をあの場所で歌ったなとか、そんな風景を思い出すところがある。
ファンの皆さんも同じように年を重ねられた方も結構いらっしゃると思うので、その方たちも一緒に「ああ、そういえばあんなこともあったな」と思い出しながら歌を聴いて頂けるようにと考えて、このタイトルに決めた。そんな感じですね。
――楽曲と風景、その例を語っていただいてもよろしいでしょうか。
岸田:そうですね。僕の歌に「れんげ草の唄」という曲があります。デビュー後なかなか売れなくて、本当につらい時代があって。でも忙しい。疲れ果てた時に、ふと田舎の風景を思い出して、田舎に帰りたいなって思ったこともあった。若い頃はずーっと都会に憧れていた少年も、都会でいざ暮らしてみると疲れて今度は田舎に憧れてしまう。そんな気持ちを歌ったのが「れんげ草の唄」です。
僕の生まれた町では、春になると一面のれんげ草、ピンクに染まる所があってね。そこで皆で遊んでた。ふるさと=「れんげ草」のピンクのイメージが僕の中に強くあります。
春先、移動中の新幹線からピンクの絨毯のように見える場所もあって、「ああ、れんげ草ばかり植えてるところもあるんだ」と考えると、すごくふるさとを感じるんです。
「れんげ草の唄」には、れんげ草という言葉はまったく出てこないけれど、ふるさとに夢破れて帰って来た時におふくろだったり、家族だったり、友達だったり、非常にあったかいものとしてそこに居てくれることに心癒やされる。夢破れたけれども、素敵なふるさとがある、そんな歌なんですね。この歌に描いているイメージは「懐かしい風景」、ふるさと・岡山の風景と言えると思います。
今年、岡山では大きな水害があって、すてきな風景の記憶がある岡山が、自然災害、水害に傷ついている。岡山って、水害なんかこれまで全くなかったのにね。
想像してなかったことが起こるんだなって皆驚いたと思うんですけども、それに負けちゃいけない。応援しながら、ふるさとの懐かしい風景を大事にしていきたいと思いますね。
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