草なぎ剛「そこにいるだけの人になりたい」【連載コラム】
芸術家としての一面が開花してきてすごい
早朝パリに到着。ホテルの部屋で少しゆっくりしたあと、ルーブルへ。ドキドキしたよね。初めての場所で雰囲気もアートな感じがあふれていて、広い会場が慎吾の作品で埋まっていた。今まで彼が絵を描いてきて、ずっとやってきたものの一部ではあるんだけど、こだわって展示されている作品が100点以上、その数にも驚いた。慎吾のことは分かってはいるんだけど、芸術家としての一面が開花してきてすごいなって。パリの目の肥えたアート関係の方たちに代わる代わる紹介され、この作品はこういう気持ちで描いたんですって感じで通訳の方を通して説明している慎吾を見ていて、ちょっと遠い存在の人にも感じたよね(笑)。日本のすごい新人が来た!と、パリの人たちが食い入るように作品を見ていて僕も誇らしかった。
慎吾は「ルーブルで個展ができたのはつよポンが背中を押してくれたから」とよく言ってくれるんだけど、僕、それ覚えてなくて。たぶんスタッフの方との食事会だったのかな。僕らの仕事を手伝ってくださる方がちょこちょこ現れたときに、たまたまアートに精通している方がいらして、慎吾に、「作品見せといたほうがいいんじゃない?」と言ったんだと思う。ジャスト1年前の話。言ってみるもんだよね。先のことは何も決まってなかったから、とりあえず言ったりやったりしないことには始まらないと思っていた自分がいた。とにかく当時は必死だった。
新しい地図を広げて、地図の中に慎吾のアートが一緒に進んできていて。それは偶然だったのかもしれないけど、こういう道が引かれていたのかなとも思ったり。この1年、映画もやったし舞台もあったし、慎吾自身も僕も吾郎さんもそうだけど、慎吾のアートは別な大きなこととして一緒に寄り添ってきてるもので。僕はアートをやるわけではないけど、新しい地図を一緒に描いている者としては、僕の中でも新しい色彩が生まれた気がしてる。いいスパイスになったといえば簡単な言葉だけど、本当にいい刺激になってます。彼のアートは、エンターテインメントの世界を広げてくれたと思います。